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人事労務の法律教室-116
~月をまたぐ振替休日の取得について~

急な受注が入ったため従業員に休日出勤してもらい、翌月に振替休日を取るように指示したところ、従業員過半数代表者から翌月振替は違法だとの指摘を受けました。月をまたぐ振替休日の取得は問題があるのでしょうか?

振替休日とは、就業規則等に定められている会社の所定休日を労働日とし、所定労働日を休日にするという、いわゆる休日と労働日の振替のことをいいます。

同じような措置に「代休」があります。これらの違いは、振替休日を行うにはあらかじめ休日を振り替える通知をする必要があることです。これにより所定の休日は労働日扱いとなるため、休日出勤とはなりません。しかし、代休は休日出勤させた後、事後的に代わりの休日を与えることになるので、休日出勤である事実に変わりはないことになります。行政通達でも「就業規則において休日を特定したとしても、別に休日の振替を必要とする場合、休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって休日を振り替える前にあらかじめ振り返るべき日を特定して振り替えた場合は、当該休日は労働日となり、休日に労働させることにはならない」とされています(昭63.3.14基発150・婦発47)。

したがって、振替休日を行うためには、「就業規則上で休日と定められた日に労働する場合は休日の振替を行うこと」などと、就業規則や労働契約に定めておく必要があります。なお、振替休日によって所定の休日に労働させても、その日は労働日となるので休日労働に対する割増賃金は発生しません。ただし、休日を振り替えたことにより、その週の法定労働時間(40時間)を超える労働時間については時外労働となるので、割増賃金(2割5分以上)の支払いが必要となります。

しかし、月(または同一賃金計算期間)をまたぐ場合は、同一賃金計算期間内に振替休日を取っていないため、まずはいったん休日勤務分の賃金について割増分を含めて支払わなければ、労働基準法第24条の賃金の全額払いの原則に違反することになります。したがって、一賃金計算期間内に振替休日を取ることができず、その後の賃金支払期間に振替休日を取得する場合には、休日出勤した賃金支払期間の賃金については割増し分を含めて休日労働分を支払い、振替休日を取得した賃金計算期間の賃金について割増分を賃金から控除する方法で調整することになります。

このように、振替休日を休日労働のあった日の属する賃金計算期間内に取得させるようにしないと給与計算が煩雑になりますので、就業規則などで振替休日の取得ルールを明確にしておきましょう。

○今月のポイント!
  • 振替休日について法的な振替期限は定められていない。
  • ただし、月(または同一賃金計算期間)をまたぐ振替休日は、いったん休日勤務分の賃金を支払い、休日を取得した月に振替休日分の賃金を控除するなど給与計算が煩雑になるので注意が必要。
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