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従業員の結婚に関して特別休暇を5日間与えることにしていますが、入籍日や挙式日から半年や1年ほど経ってから特別休暇を請求してくる場合があります。特別休暇の取得期限を設けることは違法でしょうか?
一般に企業が設ける特別休暇とは、使用する労働者および労働者の家族の慶事や弔事に際し、福利厚生制度の一つとして年次有給休暇とは別に特別に与える休暇をいいます。 休暇には法律上の休暇(法定休暇)と会社が就業規則などに定める任意休暇があります。法定休暇には労働基準法に基づく年次有給休暇、産前産後休暇、生理休暇、育児・介護休業法に基づく子どもの看護休暇、家族の介護休暇、その他裁判員休暇などがあります。法定休暇は原則として労働者が請求要件に該当し、請求した場合には付与しなければなりません。
他方、任意休暇には特別休暇としての慶弔休暇、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇、夏季・冬季休暇などがあり、休暇制度を設けるか否かは会社の判断となります。特別休暇を設けないことによって法違反となるものではありません。特別休暇を設ける場合でも、その利用目的、取得要件、取得可能日数などは任意に決めることができます。
法定休暇である年次有給休暇の請求権は、労働基準法第115条に基づき2年の時効があり、2年を経過すると残日数があっても請求権が消滅します。しかし、特別休暇については法律上のものではないので労働基準法上の時効は適用されず、請求権の時効を定める場合には就業規則などにいつまでの請求を認めるか、その取得請求の有効期間を任意に定めることができます。
「令和5年就労条件総合調査」によれば、何らかの特別休暇制度がある企業割合は55%となっており、企業規模は大きいほど特別休暇制度がある企業割合が多くなっています。働きやすい職場環境を整える方法は多岐にわたりますが、特別休暇などの福利厚生制度を整備することは労働者のモチベーションアップにつながります。特に結婚といった人生の大きなイベントにおいて結婚休暇を設けることは、福利厚生に対する労働者の満足度も高まることになります。結婚休暇があれば労働者が結婚式や新婚旅行、新生活の準備などに集中できる時間を作ることができます。しかし、昨今の結婚事情をみると、入籍するだけで結婚式や披露宴は行わないとか、新婚旅行も旅費の安い時期に行こうとして入籍日や結婚式から一定期間をおくケースも増えています。
こうした事情を勘案して、実情に沿った有効な結婚休暇とすべく見直しを検討することも必要でしょう。例えば、結婚休暇に取得期限を設けて「入籍日または挙式日から1年以内とする」などを就業規則等に定めることで、取得期限を経過した場合は請求権が消滅します。また、一般に結婚休暇の日数は5~7日程度が多いですが、それを分割して取得することができるようにすれば挙式用と新婚旅行用に分けて取れるようになります。 また、入社前に既に入籍していて入社直後に式を挙げる場合もありますので、「結婚休暇は、入社後6ヶ月経過した者に付与する」や「入社前に入籍済みの者には適用しない」などの請求資格要件を定めることもできます。
特別休暇は必ずしも有給を前提とするものではなく、有給・無給は企業が定めるものです。したがって、その日数の全部を有給とすることも、一部を有給とすることも差し支えありません。一部を無給とすることで有給での休暇を希望する場合で、労働者に年次有給休暇の残日数があれば年次有給休暇の取得促進にもつながります。こうした点を総合的に勘案して有効な特別休暇としての結婚休暇を検討すべきでしょう。