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人事労務の法律教室-86
~育児休業終了後の育児短時間勤務とフレックスタイムの併用~

育児休業終了後、職場復帰した社員が育児短時間勤務を希望し、1日6時間勤務することになりましたが、弊社で一部導入しているフレックスタイム制度の併用もしたいとの相談がありました。併用させなければならないのでしょうか?

育児短時間勤務制度とは、育児・介護休業法(略称)に基づき3歳までの子を養育する労働者が、1日の所定労働時間を原則6時間とすることができる制度であり、対象労働者から申し出があった場合は会社はそれを拒むことができません。また、3歳以上小学校就学前の子どもを養育する労働者に対しても、所定労働時間の短縮措置を講じるよう努めなければならないこととされており、小学校就学前までの制度とするか否かは企業の裁量によります。

このような育児短時間勤務制度は、労働者にとっては、育児と仕事の両立を図りながら働き続けることができ、会社にとっても人材の確保・維持ができ、相互にメリットがあります。

育児短時間勤務は、前述の通り1日6時間を原則としていますが、勤務形態の設定については特段の定めはありません。例えば、始業9時・終業18時、休憩時間1時間を除く8時間労働制の会社で、出社時刻を1時間遅くして、退社時間を1時間早める時短勤務で保育所の送り迎えを可能とするようなケースも多く見受けられます。なお、育児短時間勤務で6時間勤務の場合、労働時間が6時間を超えることができない限り、休憩時間を設けることなくとも違法ではないので、休憩を取らないことを前提に6時間勤務を設定することも可能です。

今回の相談はフレックスタイム制との併用についてです。フレックスタイム制とは、一定の労働時間の清算期間を設けて、あらかじめその期間について定められた総労働時間の範囲内で、所定労働日の始業および終業の時刻を労働者が自由に決めて働く制度です。フレックスタイム制には完全フレックス制(出退社の時刻を労働者が事由に決め勤務するもの)とコアタイム(必ず勤務していなければならない時間帯を決めるもの)を設定する場合があります。

フレックスタイム制を導入する場合には、就業規則等への定めと従業員の過半数労働組合または過半数代表者との労使協定で、

  • ①対象となる労働者の範囲(各人ごと、部ごと、課ごとなど)
  • ②労働時間の清算期間(通常は賃金計算期間等)
  • ③清算期間の起算日
  • ④精算期間の総労働時間(週平均40時間以内)
  • ⑤標準となる1日の労働時間
などを定めなければなりません。

以上の点から、フレックスタイム制と育児短時間勤務制との違いは、フレックスタイム制が清算期間内の働くべき総労働時間の範囲で労働日の始業・終業の時刻およびその日何時間働くかを自由に決めることができるのに対して、育児短時間勤務は原則1日6時間を必ず働かなければならない点にあります。働き方の自由度としては、フレックスタイム制の方が高いと言えます。ただし、フレックスタイム制の場合、清算期間の総労働時間は働かなくてはなりませんので、育児短時間勤務制度より総労働時間は長くなります。

そこで、育児短時間とフレックスタイム制度の両方を併用することも可能です。たとえば、すでにフレックスタイム制度を導入している部署で働く労働者が育児短時間勤務制度の申し出があった場合には、それを拒むことはできません。この場合、完全フレックス制度を導入している場合は、清算期間内の総労働時間は標準となる1日の労働時間は原則6時間、通常の労働者より少なく、その範囲での労働時間を調整して働いてもらうことになります。また、コアタイムを設定している場合は(通常勤務者より短くするなどの適用)、原則6時間での適用も可能でしょう。

○今月のポイント!
  • 育児短時間制度とフレックスタイム制の併用は可能。この場合、清算期間内の総労働時間は通常の労働者より少なくなる。
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