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人事労務の法律教室-77
~労働時間管理と計算法~

当社では、遅刻・早退および残業時間に関して、労働時間管理および給与計算の便宜上1日単位で5分未満は0分、5分以上10分未満は5分とし、5分単位としています。先日、従業員から残業時間数に比べて残業代が少ないとの苦情がありました。このような計算処理は違法なのでしょうか?

労働時間管理およびその計算は、1分単位でしなければなりません。ご相談のように給与計算が煩雑になるなどの理由で、1日につき5分未満もしくは10分未満などの時間を5分単位で切り捨て処理していることがよくあります。たとえば、日ごとに10分未満切り捨てで対応し得る場合に、始業時刻に5分遅刻しても遅刻0分で処理することになり、5分の遅刻が10日あれば合計50分相当額は不就労でも賃金カットされないことになります。この点は労働者にとって有利となり、問題ありません。

しかし、たとえば、「労働時間は10分単位で計算し、1分でも遅刻したら10分の遅刻とみなす」として賃金をカットすることは、実際に労働をした時間(5分の遅刻の場合は残りの5分)は、労働していても賃金未払いとなってしまうことになります。残業時間の計算においても同様であり、1時間5分の残業をしても10分未満切り捨てとなれば、残業時間5分が10日となると、50分の残業代が未払いとなります。

労働基準法では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その金額を支払わなければならない」(第24条第1項)と定めています(賃金全額払いの原則)。この定めは、労働した時間に対応する賃金は、たとえ1分であっても賃金を支払うことを定めているものです。これに違反した場合には「30万円以下の罰金」という刑事罰も設けられており(労働基準法120条1号)、労働基準監督署の調査などで発覚すると是正指導・勧告を受け、遡及して支払いを命じられることにもなります。

なお、労働時間の端数処理に関しては、例外が認められており、「1ヶ月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは差し支えない」とされています(昭63.3.14 基溌第150号)。たとえば、1日の所定労働時間が7時間である会社において、1か月の賃金締切期間に3日間の残業時間があり、それぞれ「16分」、「31分」、「45分」であった場合、合計1時間32分の残業時間があることになります。この場合に、端数処理として32分を1時間に切り上げることは差し支えありません。併せて、3日間の残業が「10分」、「31分」、「45分」で、合計1時間26分を1時間として26分切り捨てることも差し支えありません。つまり、30分以上は切り上げ、30分未満は切り捨てるという、有利となる場合、不利となる場合を混在させることで一か月という一賃金締切期間単位で時間外労働の端数処理を行うことは認められています。しかし、日々の労働時間の端数処理については、労働者にとって有利となるような切り上げ処理(10分未満は10分とするなど)以外は認められないことになります。労働時間計算に不随して注意しなければならないのですが、残業代(割増賃金)の計算に伴う端数処理です。「残業代の基礎となる1時間当たりの賃金額および残業代の計算結果に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上の端数は切り上げること」および「1ヶ月における時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の割増賃金の総額に、1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上の端数は切り上げること」は差し支えありません。

○今月のポイント!
  • 労働時間の計算は日々分単位で管理・計算し、一賃金支払期間の合計で端数処理する
  • 賃金の端数処理は、50銭未満は切り捨て50銭以上は1円に切り上げる
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