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人事労務の法律教室-69
~年次有給休暇の未消化分の算入法~

当社では年次有給休暇の取得請求にあたり、前年度の繰越日数分がある場合であっても新規発生分から取得させていたところ、従業員から違法だと言われました。このような運用方法に問題があるでしょうか?

労働基準法上の年次有給休暇は、発生要件(所定労働日数の8割以上の出勤率)を満たしている場合には、下表の日数を付与しなければなりません。また、年次有給休暇の請求権は2年です。したがって、従業員がその年度に与えられた年次有給休暇の付与日数を、付与年度内に消化することができなかった場合には、その残日数は翌年度に限り繰り越されます。新たに年次有給休暇を付与する場合には、前年度の発生分に限り取得残日数が何日あるのかを確認しなければなりません。

勤続年数 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5年以上
付与日数 10 11 12 14 16 18 20

なお、会社によっては、従業員が年次有給休暇を取得する場合、前年度繰越分から取得するのか、あるいは発生年度分から取得するのかが問題になることがあります。通常は、2年の時効との関係もあり、特段の定めがない限りは、前年度の繰越分から取得することとする運用になりますが、この点においては会社がどのように運用するかによって、従業員にとって有利にも不利にもなり得ます。

たとえば、入社6ヶ月経過した従業員については「10日」、6ヶ月経過後1年経過した場合(入社後1年6ヶ月経過)には、「11日」、さらに1年経過した場合(入社後2年6ヶ月経過)には「12日間」を付与しなければなりません。2年6ヶ月経過した時点で入社後全く年次有給休暇を取得しなかった場合には、≪10日+11日=21日≫を保有していることになります。しかし、2年6ヶ月経過した時点で新たに12日を付与する場合には、繰越しできるのは1年6ヶ月経過した時点で付与された11日分のみとなります。したがって、仮に未消化分21日のうち5日消化していても、2年6ヶ月経過後1年間に取得できる年次有給休暇の日数は≪新規発生分12日+前年繰越分11日=23日分≫となります。

しかし、会社によっては就業規則で「年次有給休暇は、当該年度新規発生分から取得し、当該年度の年次有給休暇の全日数取得後に、前年度の繰越分を取得することができる」というような定めをしていることがあります。このような規定がある場合には、それに基づき取得することになります。

したがって、前述のような規定となっている場合には、未消化分21日のうち、5日取得したものは、入社1年6ヶ月経過して付与された11日分のうちの5日を取得したこととなり、2年6ヶ月経過後1年間に取得できる年次有給休暇の日数は≪新規発生分12日+前年繰越分6日=18日≫となります。既定の仕方次第では従業員にとっては不利、会社にとっては有利となることになります。しかしながら、このような規定がある場合にはその運用が違法となるものではありません。

年次有給休暇の取得順序については労使の利害が絡むため、どちらを先に取得すべきかを明確にしておかないと、認識の違いによってトラブルになる可能性がありますので、就業規則等で取得順位を定めておく必要もあるでしょう。

その場合、これまでは前年度分から年次有給休暇を消化していた会社が、新たに就業規則を改定して、新規発生分から取得させるような定めをすることは、就業規則の「不利益変更」に該当する可能性もありますので注意しなければなりません。

○今月のポイント!
  • 年次有給休暇の請求権は2年。未消化分は翌年に繰り越せる。
  • 当該年度において、前年の繰越分を先に消化するか、当該年分を先に消化するかは、就業規則で決めておく。翌年度の有休日数の算定を左右する大事な取り決めとなる。
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