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人事労務の法律教室-67
~産後の解雇制限と死産の場合の対処法~

業績の悪化に伴い、従業員数名に一定条件のもとに整理解雇を通知し合意を得られましたが、対象従業員に死産で産後休暇中の女性従業員がいて解雇を拒否しています。死産でも解雇が制限されるのでしょうか?

新型コロナウィルス感染症の影響により業績が悪化して、関連する倒産件数も500件を超え右肩上がりの状況です(帝国データバンク調査・9月時点)。経営の行き先が不透明な中で、中小企業もさまざまな施策を講じて生き残りを図らなければなりません。倒産に至らないまでも、事業縮小に伴い希望退職募集や整理解雇を選択せざるを得ない場合もあります。整理解雇は、通常の解雇とは異なり、経営状態の悪化で事業存続のためにやむを得ず人員を削減しなければならない場合に行われるものです。

しかし、通常、整理解雇の有効性判断には4つの要件

  • ① 人員削減の経営上の必要性
  • ② 解雇回避の努力の履行
  • ③ 解雇対象者の人選基準の合理性
  • ④ 解雇手続きの相当性
があり、それらに照らして整理解雇が相当であり、かつ、合理的であるかを総合的に勘案されることになります。なお、ここでは整理解雇について詳しくは述べません。対象者の中に死産で産後休暇中の女性がいるとのことですが、結論から申し上げますと整理解雇の対象者にはできないことになります。

事業縮小に伴う整理解雇は、普通解雇に該当します。したがって一般的には、就業規則の普通解雇事由に「事業の運営上等やむを得ない事由により事業の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ、他の職務への転換が困難なとき」などと定めていることが多く、この規程を適用することになります。なお、整理解雇が可能な場合であっても、注意しなければならないのは「解雇制限」です。

労働基準法では、「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規程によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規程によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない」(第19条)と定めています。なお、解雇制限の例外となる「事業の継続が不可能となった場合」が整理解雇の事由となりますが、この例外事由に該当するか否かは労働基準監督署の認定が必要となり、当該認定を受けない限り解雇制限の適用を受けることになります。

また、労働基準法第65条では、母体保護の観点から女性については原則として産前6週間(出産予定日より6週間前から)、および産後8週間の休業を認め、この間およびその後30日間は解雇が制限されています。

産前の休業は、本人の請求があって初めて発生するため、本人が休業しないで就労している場合は、解雇は制限されません。また、産後は出産日の翌日から8週間は解雇が制限されますが、産後6週間を経過した女性が復職を請求した場合は、医師が支障ないと認めた業務に就かせることは認められていますので、産後について解雇が制限されるのは、産後8週間の休業後、職場復帰してから30日間、または産後6週間を経過し医師の診断に基づき職場復帰してから30日間となります。

なお、ここでいう産前産後の産後とは、妊娠4ヶ月以上の分娩後のことであり、それが正常分娩、死産や流産、人口中絶であるかは問いません。

○今月のポイント!
  • 整理解雇は労働基準法の定める解雇制限に則らなければならない。
  • 産後8週間およびその後30日間は解雇が制限される。
  • 「産後」は、妊娠4ヶ月以上の分娩後のことであり、正常分娩のほか、死産や流産、人口中絶を含む
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