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パート労働者を募集してもなかなか応募がないので、正社員募集に切り替え募集をかけたところ、パート労働者からあらかじめ私たちにも募集の内容を知らせてほしかったとの苦情が出ました。
苦情を申し出ているパート労働者の方は正社員になりたかったのではないでしょうか?「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に基づき、短時間・有期雇用労働者を雇用する事業主は、短時間・有期雇用労働者の通常の労働者への転換を推進するために、次のいずれかの措置を講ずる義務があります(第13条)。
ここでいう「通常の労働者」とは、正社員がいる場合には正社員、いない場合はフルタイムで基幹的業務についている無期契約フルタイム労働者をいいます(以下、正社員等という)。
このうち、①の措置を講ずる場合には、募集に応ずる労働者が従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の当該募集に係る事項について、短時間・有期雇用労働者がわかるように社内への掲示や、メールによる連絡などにより周知しなければなりません。したがって、ハローワークに正社員募集の求人票を出す場合には、あわせて事業所内掲示などにより、その募集内容を短時間・有期雇用労働者に周知しなければなりません。
なお、募集内容は周知すれば足り、実際に応募した短時間・有期雇用労働者を正社員等として優先的に採用しなければならないというものではありません。採用するか否かについては、公正な採用選考である限り、事業主の判断に委ねられています。
また、周知の期間も、短時間・有期雇用労働者が正社員等の募集期間が経過するまでに知ることのできるものであれば、特に限定されていません。ただし、周知したのみで応募を受け付けないとか、短時間・有期雇用労働者にも応募資格があることが容易にわからない方法で周知するなど、実質的に応募の機会を付与したことは認められないような場合には、この措置を講じたことにはなりません。
なお、周知にあたって、特定の短時間・有期雇用労働者のみに知らせるというようなことは、それ以外の短時間・有期雇用労働者には正社員等への転換機会が与えられてないということになりますので認められません。すべての短時間・有期雇用労働者に対して正社員等への転換機会が与えられるよう、公正で客観的な仕組みを整える必要があります。短時間・有期雇用労働者から正社員への転換が可能な措置を設けることは、これらの労働者のモチベーションを高め、能力発揮につながります。キャリアアップ助成金などを活用して有効な転換措置の導入も検討すべきでしょう。