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経営不振のためにやむを得ず一部の部署を閉鎖するにあたり、解雇等のトラブルを回避するためにも、希望退職を募る予定です。どのように進めていけばよいでしょうか?
業績が悪化したりすると、やむを得ず整理解雇前段階として解雇回避のために希望退職の募集や退職勧奨を実施することがあります。希望退職の募集は、会社側が退職金の増額や、退職に伴う有利な条件などを提示して労働者の自発的な退職の申出を募る方法です。最終的には労働者が退職の意思表示をし、会社側はその退職の申し込みを承諾するという合意退職を意図したものです。経営不振だからといっていきなり整理解雇などを実施すると、解雇権濫用で訴訟等に発展することもあり得ますので、希望退職の募集という手法を用いて退職に関して会社と労働者の合意形成を図ることはトラブルを回避する方法の一つです。
判例においても希望退職募集は、労働者がその募集に応じて退職を申し出れば合意解約の申し込みであり、使用者の承諾で合意解約が成立すると考えるべきと言える、としています(津田鋼材事件・大阪地判平11.12.24)。
希望退職を募集するにあたっては、一般的に、書面により希望退職を募集するに至ったやむを得ない経営上の理由や背景などを説明し、
まず労働組合や労働者に対し、募集開始の前に説明会を開いて、希望退職募集を行わざるを得ない会社の経営状況や募集内容(募集人数、対象基準、退職時期など)、退職金の特別加算措置や再就職先のあっせんなどについて十分に説明し、その理解を得るようにすべきです。募集したものの予定人員に達しなければ、第二次希望退職を募る場合があります。
なお、会社側の提示した募集条件に基づき希望退職に応じるかどうかは、あくまでも労働者の自由です。会社が希望退職に応じるように圧力をかけたり、応募しなかったら不利益に扱うなどと脅したりすると、実質的に解雇となり、退職強要によって退職の意思表示を強いられたとして、応募の事実が取り消されたり、不法行為に当たるとして損害賠償の責任が認められたりすることにもなります(下関商業高校事件・最―小判昭 55.7.10)。
希望退職の募集は、転職の難しさや生活不安など労働者の退職後の人生に大きな不利益を与えるため、労働者の被る不利益を軽減する措置を講ずるべきであり、特に退職金の特別加算措置は欠かせないものとなっています。
なお、希望退職の募集を行うと、退職して欲しくない労働者が応募してきて、その後の経営上または業務上、支障をきたす場合もあります。こうした場合を想定して、希望退職制度の適用を受けるには会社の承認が必要との条件を付けることは差し支えありません。
また、応募対象者を「一定年齢以上の者に限る」などその対象に制限を設ける方法があり、制限内容が合理的である限り問題ありません。
なお、希望退職の募集に際して、女性だけあるいは男性だけを希望退職の募集対象にすることは、男女雇用機会均等法に違反することにもなりますので注意しなければなりません。