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人事労務の法律教室-62
~新型コロナウィルス感染症拡大にともなう雇止め~

今般の新型コロナウィルス感染症の拡大にともない経営状況が悪化し、やむを得ず、契約社員やパートを契約期間満了に合わせて雇止めしようと思いますが、問題はありますでしょうか?

新型コロナウィルス感染症の影響により、起業によっては事業活動を縮小せざるを得ない場合があります。こうした急激な経営環境の変動に伴い、雇用環境において最も影響を受けやすいのが、契約社員、派遣労働者、パートタイマーなどの有期雇用労働者です。雇用の調整弁として契約期間中の解雇や契約期間満了による契約更新拒否(雇止め)が発生し、労使紛争が増えることになります。

有期雇用労働者の契約期間の満了に伴い契約更新も行わず、労働契約を終了させることを「雇止め」といいます。この雇止めは、当初から定めてあった契約期間が終了することでの雇用関係の終了ですので、それ自体は問題となるものではありません。しかし、有期労働契約を締結するにあたっては、厚生労働省より「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が告知されており、労働契約の締結時に「契約期間の更新の有無」、「更新する場合の基準」を明示しなければならないことになっています。そのうち契約期間の更新の有無に関しては「自動更新する」、「契約更新はしない」、「更新する場合がある」などと定めなければなりません。されに「更新する場合がある」とした場合にいはどのような場合が更新するのか、しないのかの判断基準として「会社の経営状況により判断する」

「労働者の能力により判断する」「契約期間満了時の業務量により判断する」など、契約期間の更新について有期雇用労働者の予見可能性と納得性のある基準を示さなければならないことになっています。したがって、たとえば、有期雇用労働者との労働契約の締結に当たり「更新する場合がある」とし、その判断基準を「会社の経営状況により判断する」と明示している場合には、非常災害時等の影響で経営状況が悪化したことを理由に期間満了をもって雇止めすることは認められやすいと考えられます。なお、この場合でも、その有期労働契約が、①3回以上更新されている、②1年以下の契約期間の有期労働契約が更新され通算1年を超えている、③1年を超える契約期間で締結している、のいずれかに該当するときは、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までに雇止めの予告が必要です。

他方、有期労働契約の契約期間満了による雇止めであっても、当該契約が①期間の定めのない労働契約と実質的に同じとみなされる場合、②契約期間の更新に合理的な期待がある場合には、雇止めすることに「合理的な理由があり、かつ、社会通念上相当である」ことが認められなければ無効となり、従前の契約と同一の労働条件で更新されたものとされますので注意が必要です(労働契約法第19条)

この判断基準に該当するか否かは、有期雇用労働者の従事する業務の内容(臨時的なものであるかそれとも恒常的なものであるか)、恵沢更新の回数、通算雇用期間、契約更新の手続きが厳格に管理され適正に行われていたか否か、雇用継続を期待させる言動があったかどうかなどを総合的に勘案して判断されます。したがって、更新回数が多く長期雇用となっていたり、更新手続きが曖昧で形骸化していたり、将来正社員にするなどの雇用継続への期待感を持たせる言動があったような場合には、契約期間満了ということだけで雇止めすることには難しくなり、強引に雇止めすると労使トラブルに発展することにもなるので、注意しなければなりません。

○今月のポイント!
  • 有期労働契約時に、契約更新について明示しなければならない。
  • 30日前までの雇止めの予告が必要ないくつかの場合がある。
  • 更新実績が多かったり、更新手続きが形骸化している場合の雇止めはトラブルになりかねない。
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