M&Aロゴ

人事労務の法律教室-61
~出向者への36協定の適用~

当社には親会社からの在籍出向者がおります。先日、当社の36協定の限度時間内(月45時間)で残業を命じたところ、出向元の36協定の限度時間(月30時間)の適用を受けるので、残業命令に従う義務はないと言われました。どのように対応すべきでしょうか。

労働基準法上の法定労働時間は、「週40時間、1日8時間」、法定休日は「週1日又は4週4日」と定められています。それを超えて時間外労働または休日労働をさせる場合には「時間外労働及び休日労働に関する協定」(いわゆる36協定)を締結し、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。この36協定の締結・届出をせず、時間外労働や法定休日に労働させると労働基準法違反となります。

使用者は、この36協定で定めた時間を限度に時間外労働及び休日労働をさせることができますが、働き方改革関連法による労働基準法の一部改正に伴い、原則として、月45時間、年360時間を限度に時間外労働をさせることのできる時間数を定めなければなりません。ただし、臨時的な特別の事情がある場合には、特別条項付き36協定を締結することにより、年720時間以内、1か月100時間未満(休日労働を含む)、2か月~6か月各月平均80時間以内(休日労働を含む)を限度に労働させることができます。この場合でも、原則である月45時間を超えることができるのは年6回が限度となります。

この36協定の適用に関して、自社で直接雇用している従業員の時間外労働および休日労働については、当然、その事業場で締結されたものが適用されます。しかし、出向元起業と雇用関係にある在籍出向者については、出向元と出向先のどちらかの36協定の適用を受けるのかという問題があります。在籍出向者の雇用関係は出向元にあるものの出向先の指揮命令を受けて出向先で就業しているので、出向先の36協定が適用されることになります。したがって、出向先36協定が締結されていなければ、出向者は出向先において時間外・休日労働ができないことになります。また、出向先が36協定の締結・届出をしていれば、その限度で出向先の命令により時間外労働又は休日労働をさせることができることになります。

出向先は、従業員の過半数で組織する労働組合または当該労働組合はない場合は従業員の過半数代表者と36協定を締結するにあたり、出向者をこの「過半数」に含めなければなりません。

また、出向者について、出向元と出向先とで36協定の内容が異なるときには、双方の間で締結する出向契約書に時間外労働および休日労働に関する特段の取り決めがない限りは、出向元における時間外労働の実績にかかわらず、出向先の36協定で定める範囲で時間外および休日労働を行わせることができます。

なお、労働基準法上、労働時間は事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算することとなるので、月の途中で出向してきた場合などは、出向元における時間外労働を出向先における時間外労働は通算することになります。したがって、たとえば、前述の時間外労働限度(月45時間、年360時間)は、出向元での時間外労働および出向先での時間外労働を通算して適用されることに注意しなければなりません。

○今月のポイント!
  • 在籍出向者は、出向先の36協定の適用を受ける。
  • 従業員の過半数代表者と36協定を締結する場合、出向者をこの「過半数」に含めなければならない。
  • 出向元における時間外労働を出向先における時間外労働は通算して、法律の上限規制の適用を受ける。
Copyrights 2008-2009 M&A Allright reserved.