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人事労務の法律教室-59
~有休の付与基準日が4月1日ではない従業員への法律運用~

当社の年次有給休暇の付与基準日は毎年10月1日です。昨年4月1日から年次有給休暇を1年間に5日取得させなければならないとのことですが、施行日から1年となる3月末日まで5日の取得見込みが立たない従業員がおります。どのように対応すればよいでしょうか。

労働基準法の一部改正により、2019年4月1日より年次有給休暇の運用が変わりました。具体的には、新たに年10日以上の年次有給休暇が発生する労働者については、新たに年10日以上の年次有給休暇が発生する労働者については、1年間に5日は必ず取得させなければなりません。対象となる労働者は、管理監督者や有期雇用労働者およびパートタイマーも含みます。

なお、前述のとおり、この法律の施行は2019年4月1日です。したがって、適用されるのは新たに年次有給休暇を付与する基準日が2019年4月1日以降に到来し、その基準日に新たに10日以上発生した労働者につき、その内の5日が取得の対象となります。

たとえば、就業規則において、年次有給休暇の付与基準日を毎年4月1日と定めている会社の場合、2019年4月1日に新たに10日常発生する労働者に対しては、本年3月31日までに5日間の年次有給休暇を取得させなければ法違反となります。しかし、年次有給休暇の付与基準日を毎年10月1日と定めている会社で2019年10月1日に新たに10日以上発生している労働者に対しては、本年3月31日までに5日を取得させていなくとも法違反とはなりません。この会社の場合には、本年10月1日の付与基準日に新たに10日以上発生する労働者に対して2021年9月末日までに5日を取得させればよいことになります。

また、雇入れ日方式で年次有給休暇を与えている会社においては、たとえば2018年10月1日に正社員として入社した労働者には、雇い入れ日から6ヶ月経過した2019年4月1日に年次有給休暇10日を与えなければならないので、本年3月31日までに5日間を取得していなければ法違反となります。

このように本年3月31日まで5日を取得させなければならないのは、2019年4月1日に新たに年次有給休暇が10日以上発生する労働者です。それ以前に新たに10日以上発生している労働者については、本年中に到来する付与基準日に新たに10日以上発生する年次有給休暇について当該付与基準日から1年間に5日を取得させることで差し支えありません。

法施行日から1年間に5日の取得を求めるものではなく、法施行日を基準としてそれ以降に新たに10日以上発生する者が対象となることに注意してください。

また、強制取得の要件となる「年次有給休暇10日以上」とは、新たに10日以上発生する労働者が対象です。たとえば付与基準日を4月1日とする会社のパートタイマーで、比例付与となっている者に2019年4月に新たに8日発生し、前年繰越分を含めると14日となる場合であっても、本年3月末までに5日の取得義務はありません。2019年4月に発生した年次有給休暇は8日であり、強制取得要件を満たしていないことになるためです。

なお、前述のとおり、毎年4月1日を付与基準日としている会社で、2019年4月1日に年次有給休暇が新たに10日以上発生している労働者で取得日数が5日に満たない者がいる場合には、3月31日までに取得日数5日を満たさないと労働基準法違反となり、30万円以下の罰金の対象となります。取得日数が5日に満たない者がいるかどうかの確認をして取得を命ずるなど適切な対応が必要となります。

○今月のポイント!

2019年4月1日から1年間に5日の取得を求めるものではなく、法施行日を基準としてそれ以降に新たに10日以上発生する者が5日の取得義務の対象となる

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