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人事労務の法律教室-57
~フレックスタイム制における労働時間の清算の方法~

当社では、一部の部門でフレックスタイム制を採用しています。フレックスタイム制の労働時間の清算の仕方と遅刻・早退の取り扱いがよくわかりません。どのように対応すればよいのでしょうか。

フレックスタイム制とは、会社の所定労働日の日々の始業及び終業の時刻を労働者が自分で決めて働くことができる制度です。妊娠中または育児や介護が必要な労働者の仕事との両立支援、最近ではがん等病気治療で通院する労働者の就労支援のための労働時間制度として導入する企業も増えつつあります。

フレックスタイム制を採用するにあたっては、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、当該組合がない場合には労働者の過半数を代表する者と、

  • ①適用対象となる労働者の範囲
  • ②労働時間の清算期間及びその起算日
  • ③清算期間中の総労働時間
  • ④標準となる1日の労働時間(1日何時間くらい働くかという目安)
  • ⑤コアタイム(必ず在社していなければならない時間帯)を設ける場合にはフレキシブルタイム・コアタイムについて、労使協定を締結しなければなりません。

フレックスタイム制のメリットは、労働時間の清算期間における総労働時間が主平均40時間以内に納まっていれば、1日8時間、週40時間を超えていても、ただちに時間外労働とはならず、割増料金の問題は発生しないことにあります。時間外労働となるのは、清算期間における労働時間が法定労働時間の総枠を超えた時間です。

清算期間における法定労働時間の総枠は、週法労働時間 ×(清算期間の暦日数÷7日)となります。

たとえば、労働時間の清算期間を1ヶ月、暦日30日とした場合は、清算期間における法定労働時間の総枠は171.4時間となり、これを超えた労働時間が時間外労働となります。 なお、労働時間の清算期間の限度はこれまで「1ヶ月」と定められていましたが、働き方改革に伴う労働基準法の一部改正により、「3ヶ月」となりました。ただし、清算期間が1ヶ月を超える場合には、労使協定を締結し、それを所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。また、清算期間が1ヶ月を超える場合には、

1ヶ月ごとの労働時間が、週平均50時間を超えた時間のいずれもが時間外労働となり、割増賃金の支払義務が発生することになります。

フレックスタイム制は、労働者に始業・終業時刻を自主的に決めさせる制度であるため、遅刻・早退といった概念はなく、清算期間に設定した総労働時間を働いている限り、遅刻・早退があってもその時間分の賃金を控除することはできません。コアタイムを設けていた場合であっても同様です。しかし、出勤すべきコアタイムの時間帯に遅刻や早退等が発生し、社内の規律や秩序がみだれてしまうことがあります。そこで、就業規則を定めるにあたり制裁規定に「正当な理由なくコアタイムに遅刻・早退してはならない」と定め、それに基づいた減給処分を行うことで対応することになります。ただし、減給の制裁については、1回の事案について、平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の10分の1を超えてはなりませんので、ご注意ください(労働基準法第91条)。また、精皆勤手当を設けるなどにより、コアタイムに遅刻・早退があった場合には支給しないこととするなどの対応も可能です。

○今月のポイント!
時間外労働は

清算期間と1ヶ月ごとのダブルチェックで確認

遅刻・早退の対応は就業規則の制裁規定で決めておく

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