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人事労務の法律教室-56
~改正労働者派遣法対応で労使協定方式採用時の留意点~

当社は派遣会社です。2020年施行となる改正労働者派遣法に備えて労使協定方式を採用する予定ですが、労使協定に定めるべき事項及び派遣先がそれぞれ異なっている派遣労働者の過半数代表者の選定はどのようにすればよいでしょうか。

働き方改革関連法の成立により、大企業では2020年4月から、中小企業では2021年4月から「同一労働・同一賃金の原則」が適用されます。それに関連して、派遣労働者と派遣先の通常の労働者との待遇格差を改善することを目的とする労働者派遣方も改正施行されます。なお、この改正は企業規模を問わず、2020年4月からの施行となります。したがって、労働者派遣事業を行う派遣先事業主は、その事業規模にかかわらず、派遣労働者の待遇の決定にあたり、 ①「派遣先均等・均衡方式」(派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇の確保)によるか、②「労使協定方式」(一定の要件を満たす労使協定による待遇の確保)によるかのいずれかにより派遣労働者の待遇を確保しなければならないことになります。

「派遣先均等・均衡方式」は、派遣先事業主から比較対象労働者(派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する派遣先の通常の労働者)の賃金などの待遇に関する情報を提供してもらうことが条件となり、難しい場合が多いのが実態です。したがって、派遣元事業主の多くは労使協定方式を採用することが見込まれています。同一労働同一賃金が求められる労使協定には、

  • ①対象となる派遣労働者の範囲
  • ②賃金の構成
  • ③賃金の決定方法(基本給・賞与・通勤手当・退職手当・割増賃金など)
  • ④賃金の決定にあたっての評価
  • ⑤賃金以外の待遇(教育訓練や福利厚生など)
  • ⑥有効期間
などについて定めて記載しなければなりません。だたし、これらの具体的な内容については、派遣労働者に適用される就業規則や賃金規程などに定めていれば、労使協定自体には詳細を定めなくても差し支えはありません。

この労使協定方式を採用する場合は、2020年4月1日より前に過半数労働組合がある場合は当該労働組合、過半数労働組合がない場合は過半数代表者と労使協定を締結しなければなりません。既に、大手派遣会社では、派遣先事業主に対して、労使協定方式による場合の方針などを具体的に示しているところもあります。ただし、労使協定の効力が発生するのは2020年4月以降です。

労使協定の締結にあたり過半数代表者を選定する場合、派遣労働者はそれぞれ異なる派遣先に派遣されていますので、選出が困難な実態があります。このような場合には、たとえば派遣労働者に給料明細を交付する際や派遣音事業主が派遣先を巡回する際に、労使協定の意義や趣旨を改めて周知するとともに、過半数代表者としての立候補の呼びかけや投票用紙の配布をしたり、社内のイントラネットやメールなどにより立候補を呼びかけて投票することなどが考えられます。

なお、過半数代表者の選定は、労使協定締結方式による場合に限らず、就業規則の作成・変更に伴う意見聴取、時間外労働・休日労働に関する協定の締結の際にも必要となります。派遣元事業主は、過半数代表者が労使協定の事務を円滑に遂行できるように必要な配慮をしなければならないことになっています。たとえばイントラネット、社内メールのほか事務スペースの提供などの配慮が求められますので、提供できるように環境を整備しておく必要もあります。

○今月のポイント!

過半数労働組合か過半数代表者と労使協定を締結

派遣会社は過半数代表者選定のための啓発活動を行うべき

過半数代表者の選定は就業規則の作成・変更などの際にも必要

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