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当社は、労働者30人程度の会社で産業医は選任していません。業務が忙しいときには月の残業時間が80時間を超える労働者がおりますが、どのような対応が必要でしょうか?
従来、事業主は、①週40時間を超える労働時間(以下、時間外労働時間)が月100時間を超え、かつ②疲労の蓄積が認められる労働者に対して、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこと)を行わなければならないとされていました。
しかし、働き方改革に伴う労働安全衛生法の改正により、①の時間外労働時間の要件が、「月100時間を超え」から「月80時間を超え」に引き下げられ、厳しくなりました。この長時間労働者に対する医師による面接指導については、企業規模は限定されていませんので、御社の場合も、従業員の健康管理上、必要な措置となります。
したがって、年間で業務の繁閑に差があっても、単月で残業時間が80時間を超える労働者に対しては、医師による面接指導を受けさせなければなりません。
御社では、産業医を選定していないとのことですが、産業医の選任義務がある事業規模は、「常時使用労働者50人以上の事業場」です。御社の事業場の規模からして産業医を選任する義務はありません。しかし、この長時間労働者に対する面接指導実施者については産業医に限定していません。会社のかかりつけの医師でも差し支えありません。
また、この医師による面接指導は、長時間労働者の申し出を前提としています。したがって、時間外労働が月80時間を超えた労働者からの面接指導の申し出がなければ、面接指導を受けさせる義務はないことになります。 しかし、過労死等の認定基準等を踏まえ、労働者に対する使用者としての安全配慮義務の面からも時間外労働時間が月80時間を超える労働者に対しては、医師による面接指導を促すべきでしょう。
なお、労働安全衛生法の一部改正により、労働者の健康管理や長時間労働者の医師による面接指導を実施するためにも、使用者は労働者の労働時間の状況を把握しなければならないことになりました。注意しなければならないのは、時間外労働や休日労働が適用除外となる管理監督者に関しても、その労働時間の状況を把握しなければならないことです。労働時間の把握の方法については、個性労働省令により、使用者の現認や客観的方法によることが原則とされています。具体的には、たとえばICカードやタイムカードによる記録、パソコンの使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録などが示されています。
また、事業主は時間外労働時間の算定を行ったときは、速やかに、時間外労働時間が月80時間超えの労働者に対し、その情報を通知しなければなりません。この労働者への労働時間に関する情報の通知は、1月あたりの時間外・休日労働時間の算定を毎月1回以上、一定の期日を定めて行う必要があります。当該時間が1月当たり80時間を超えた労働者に対して、当該の超えた時間数を書面や電子メールなどにより通知する方法が適当でしょう。あの、給与明細に時間外・休日労働時間数が記載されている場合には、これをもって労働時間に関する情報の通知としても差し支えないとされています。
時間外労働時間が月80時間超えのものには医師の面接指導を
産業医選定義務は労働者数50人以上の事業場に課す
管理監督者にも、労働時間の把握を