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人事労務の法律教室-53
~みなし労働時間制における労働時間の把握~

当社では、営業が直行・直帰する場合が多く、これまでみなし労働時間制を適用し、所定労働時間を労働したものとみなしてきました。労働安全衛生法の改正に基づき労働時間の把握が義務化される中でどのような対応をすべきでしょうか?

働き方改革関連法の一つとして、労働安全衛生法が改正され、2019年4月から、会社に対して、長時間労働による面接指導実施のために「客観的方法による労働者の労働時間の状況を把握する義務」が新たに定められました(労働安全衛生法第66条の8の3)。これにより、これまで、労働時間の適用除外となっていた管理職、事業場外みなし労働時間制及び裁量労働時間制が適用されている労働者についても、労働時間の状況を把握しなければならないことになりました。

ここでいう労働時間の状況の把握とは、「労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状況にあったかを把握するものである。(平成30.12.28基発1228)と定められています。

したがって、労働者の健康確保のために「労働時間の状況」を把握することを求めている者であり、必ずしも把握した時間そのものが、労働時間として賃金の支払いの対象となるものでないとも言えます。

そもそも、労働基準法では、管理監督者は労働時間、休憩、休日については適用除外となっており、深夜業を除いて割増賃金の支払いの対象とはなっておりません。また、「事業場外みなし労働制」や「裁量労働制」については、労働基準法上「労働時間が算定し難い」ことを要件としています。働き方や休憩の取り方などは労働者の裁量によるものであり、賃金支払いの対象となる労働時間数を正確に把握することが難しいため、みなし労働時間制の適用が認められているものです。

ご相談の「事業場外みなし労働制」とは、営業業務や出張業務など会社以外で仕事に従事する場合で、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定し難い業務について認められるものです。この場合、労働時間については、「所定労働時間労働したものとみなす」ことを原則とし、その業務が通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、その業務に「通常必要とされる時間労働したものとみなす」ことになります。

直行・直帰などにより、タイムカードなどの客観的な方法による労働時間の把握が難しい場合において、事業外みなし労働時間制を適用する場合の労働時間の状況の把握についてはどのようにすればよいかということになります。

前述の通達によれば、その業務に従事する労働者の働き方の実態を踏まえて適切な方法で個別に判断することとしながらも、たとえば自己申告制により把握することもできますが「事業場外から社内システムにアクセスすることができ、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合には、直行・直帰であることを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは認められない」と定めています。つまり何らかの客観的な方法による労働時間の把握が必要というのが原則です。それでも、労働時間の状況の把握を自己申告により行うことがやむをえない場合は、その日の翌労働日までに自己申告させる方法が適当であると定めています。

○今月のポイント!

事業場外からの社外システムへのアクセスなど可能な限り客観的な労総時間把握に努める。

やむを得ず自己申告とする場合、翌労働日までに申告させる。

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