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人事労務の法律教室-51
~出向者への年次有給休暇の付与義務~

4月から親会社から出向してきた労働者が2人います。一人は在籍出向でもう一人は転籍出向です。この場合、年次有給休暇の年間5日を確実に取得させなければならないのは出向元の親会社または出向先である当社(子会社)のいずれでしょうか。

4月から新たに年次有給休暇が年間10日以上発生する労働者に対しては、年間5日は必ず取得させなければならないことになりました。

ご相談の出向労働者に関しては、在籍出向と転向出向で取扱いが異なります。 在籍出向の場合、出向労働者の雇用関係は出向元と継続しているとされるため、年次有給休暇の付与日数は、出向元の勤続年数に応じて付与される日数となります。出向元で新たに10日以上の年次有給休暇が発生する場合には、出向元においても5日は取得させなければなりません。なお、年次有給休暇に関する出向労働者の時季指定権および使用者の時季変更権は出向先並びに出向労働者の三者間での取り決めによります。

具体的には、出向元と出向先の双方で在籍出向先の年次有給休暇の取得状況を管理し、発生日から1年間に5日を取得させることについて出向元が行うか、現実に出向者が就労している出向先が行うかを出向契約書などで決めることになります。なお、発生日から1年間の途中で出向させる場合には、出向元で取得した年次有給休暇の日数を出向先が指定すべき5日から控除するか否かについても決めなければなりません。

他方、転籍出向の場合は、転籍前の出向元との雇用関係は終了しており、現在の雇用関係は転籍後の出向先の間にのみ成立することになります。したがって、労働基準法第39条に基づけば、出向先に新たに雇用された日から6ヶ月経過した日に年次有給休暇10日が付与されることになりますので、その付与された日から1年間に5日間を取得させることで差し支えありません。

なお、年次有給休暇が新たに10日以上発生する日から1年間の途中で労働者転籍出向させる場合において、以下の3つの要件を満たすときは、出向前の年次有給休暇の発生基準日から1年以内の期間において、出向の前後を通算して5日の年次有給休暇を時季指定することで差し支えないとされています。なお、この場合、出向先が時季指定義務を負うことになります。

  • ①出向時点において出向元で付与された日数及び出向元における基準日を出向先において継承すること
  • ②出向日から6ヶ月以内に、出向労働者に対して10日以上(①で継承した日数を含む)の年次有給休暇を出向先で付与すること
  • ③出向前の期間において、出向労働者が出向先で年5日を取得していない場合は、5日に不足する日数について出向元における付与基準日から1年以内に出向先で時季指定する旨を出向契約書に明記していること。

○今月のポイント!

在籍出向者の場合は出向契約書等で時季指定を取り決める。

転籍出向の場合は、転籍して6ヶ月経過した日に年次有給休暇10日を付与。

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