M&Aロゴ

人事労務の法律教室-48
~脱時間給への挑戦!高度プロフェッショナル制度~

「働き方改革関連法」の法案審議の際に注目されていたのが「高度プロフェッショナル制度」(正しくは「特定高度専門業務・成果型労働制」)です。

労働基準法の大原則としては賃金を労働時間に応じて支払うものとされていますが、この新たな制度は労働時間に関わらず仕事の成果によって賃金を支払うもので、脱時間給制度と呼ばれています。企業が国際競争に勝ち残るため、高度な専門業務に従事する者が成果を出しやすい働き方として期待されているのです。

この制度は今年4月1日より施行されますが、長時間労働や労働者の健康を危惧する声もあることから制度導入のハードルは低くありません。しかし、新たな働き方を模索するものとして、どのような制度が始まるのかを見ておきましょう。

○労働時間等の適用除外

高度プロフェッショナル制度を適用する労働者については、労働時間、休憩時間、休日、深夜労働の割増賃金の規定は適用除外されます。

たとえば管理監督者は労働時間や休憩、休日は適用除外となっていますが、深夜労働の着ては除外されていませんから、新たな制度の方が管理監督者よりも労働時間の規制を受けない働き方といえるでしょう。

ただし、労働者の健康・福祉を確保するため、働いた時間をタイムカードで記録するなどして把握するよう定められています。これを労働時間ではなく「健康管理時間」と呼んでいます。

○対象にできる労働者・業務は

対象業務は「高度の専門的知識等が必要で従事した時間と成果の関連性が高くない」ものとして厚生労働省令で定められていますが、図1のような業務が限定列挙で示される見込みです。

対象業務の中でも、この制度を適用できる労働者は「①使用者との合意に基づき職務が明確であること」「②賃金見込み額が一定額以上であること」が要件になります。

①の合意については業務内容などが記載された書面に労働省が署名することなどが検討されています。②の賃金見込額は年1,075万円となる予定です。

※これら省令等で示される内容は2018年12月26日現在の審議資料によるものです。

< 対象業務(素案)>

  • ① 金融商品の開発業務
  • ② 金融商品のディーリング業務
  • ③ 証券アナリストの業務
  • ④ コンサルタントの業務
  • ⑤ 研究開発業務
○導入の流れは

具体的には制度を導入するための流れは図2のようになります。労使委員会を設置し、一定の事項を委員の5分の4以上の多数により決議する必要があります。さらに、制度の対象となる労働者には個別に同意を得る必要があります。

このようなことから、制度の導入には社内で制度の情報やメリットを共有するなどして理解が得られる努力も求められることになります。

なお、必要な導入手順をおこなっていても図2の決議事項のうちCからEを実際に実施していない場合、労働時間等の提供除外とはならない旨が法律に明記されています。このほか高度プロフェッショナル制度の適用者には、通常の労働者が長時間労働をおこなった際に受ける「医師による面接指導」に準じた制度も実施するよう労働安全衛生法で定められています。

今回の働き方改革の多くは労働時間の規制が強化されるものですが、新たな脱時間給制度の創設は規制緩和として意義の大きいものでしょう。

< 制度導入の流れ >

Copyrights 2008-2009 M&A Allright reserved.