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当社では業績に応じて社員に「業績手当」として1万円を支給しています。成績優秀な社員には半期に一度、この業績手当を10万円増額し、合計11万円支給しています。
社会保険では、支給回数が年4回以上の手当は賞与に該当しないので「業績手当」は賞与支払届を提出しなくていいですよね?
同じ「業績手当」として支給していても、毎月の1万円と半期ごとに支払う10万円を客観的に区分できるのであれば、10万円について賞与支払届を提出する必要があります。
このようなケースについては、厚生労働省が新たに賞与の区分を明確にする通達を出し、今年1月から適用が始まっています。
社会保険においては、名称に関わらず、支給回数が年3回以下の手当は「賞与」、年4回以上のものは「報酬」となります。「賞与」については賞与支払届を提出し、賞与額に応じた社会保険料を支払う必要があります。
ただし、年4回以上の支給があれば「賞与」ではなく「報酬」となることを利用して、賞与を分割して毎月支給することにより社会保険料を削減する手法が使われることがありました。これを問題視した厚生労働省が平成27年に通達を出し、こうした支払い方をする賞与については「賞与に係る報酬」として特別な取り扱いをすることを定めています(図1参照)。
つまり、現状では「報酬」「賞与」「賞与に係る報酬」の3つの取り扱いが存在することになります。
支給回数 | 区分 | 取り扱い | 届出 |
---|---|---|---|
毎月 | 通常の報酬 | 月額賃金に含めて標準報酬月額を算定 | 算定基礎届・月額変更届 |
賞与に係る報酬※ | 7/1以前の1年間の合計額を12で割った額を 各月の月額賃金にプラスして標準報酬月額を算定 |
算定基礎届・月額変更届 | |
年4回以上 | 賞与に係る報酬 | 算定基礎届・月額変更届 | |
年3回以下 | 賞与 | 標準賞与額(各被保険者の賞与額から 1,000円未満を切り捨てた額)を算定 |
賞与支払届 |
今回、新たに出された通達は、従来の取り扱いを変更するものではありません。今まで取り扱いが明確にされていなかったために企業によって取り扱いにバラつきがあったケース(たとえばご質問のようなケース)について、例をあげて計画にしたものです。
通達では、それぞれ異なる性質を持つ手当が、まとめて○○手当として取扱われている場合、諸規定や賃金台帳などによってその泥質の違いを客観的に区分できるのであれば、それぞれの性質に従って、「通常の報酬」、「賞与」、「賞与に係る報酬」に区分するとしてます。
具体的には図2の例のような区分となります。事例1は「手当A」のうち毎月定額支給される分と半期ごとに支給される分がまとめて給与規定に規定されているが、賃金台帳には別々に記載されているというケースです。
これらは同じ「手当A」という名称であっても性質のちがいを客観的に区分できるため、毎月支給の分は「通常の報酬」、半年ごとの分は「賞与」として取り扱います。
一方、事例3では2つの手当を客観的に区分できないため、「賞与に係る報酬」として取り扱います。
「給与に係る報酬」は、1年間の合計額を12で割った額を各月の賃金にプラスして標準報酬を算定します。
給与規定 | 賃金台帳 | 支給額 | 区分 | |
---|---|---|---|---|
事例1 | 手当A | 手当A1 | 月1万円 | 通常の報酬 |
手当A2 | 半月ごと10万円 | 賞与 | ||
手当A1 | 手当A1 | 手当A | 月1万円 | 通常の報酬 |
手当A2 | 手当A2 | 半月ごと10万円 | 賞与 | |
手当A | 手当A | 手当A | 1万円の月と11万円の月がある | 賞与に係る報酬 |
賞与が新設された場合などは、年4回以上の支給が客観的に定められている場合でも、次に算定基礎届等により標準報酬月額が適用されるまでは賞与支払届の提出が必要です。