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当社ではこれまで、管理監督者にはタイムカードを打刻させていません。しかしこのごろ、打刻させた方がいいという話を聞きます。打刻は必要なのですか?
労働基準法により管理監督者は労働時間などの規制の適用除外とされていることから、労働基準法の上では管理監督者についてタイムカードの打刻などにより正確な労働時間を把握する義務はありせんでした。ただし、健康確保の面から一定の労働時間管理(たとえば、あまり長時間労働になっていないかチェックするなど)は求められるという位置づけでした。
しかし、「働き方改革関連法」により労働安全衛生法が改正され、使用者が管理監督者を含むすべての労働者の労働時間を把握するよう義務化されます。改正は今年4月1日からです。
本来、使用者には労働者が何時間働いたかを把握する義務が課せられています。
労働時間の把握方法としては、タイムカードの他、パソコンの使用記録や自己申告制などによることも認められています。ただし、自己申告制については、実際の労働時間に合致しているかどうか使用者に実態把握などが求められています。
このような労働時間の把握に関しては、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で好ましい方法などが示されています。
使用者は、把握した労働時間に基づき賃金を支払ったり、時間外労働の上限規制に抵触しないよう管理していくことになります。
ただし、労働時間を把握する必要があるのは、労働基準法を守るためだけではありません。たとえば労働安全衛生法では、一定の長時間労働があり疲労の蓄積が認められる労働者から申し出があった場合は、医師による面接指導を受けさせなければならないと定められています。
先ほどのガイドラインでは、労働基準法により労働時間を把握しなければならない労働者には、管理監督者やみなし労働時間制を適用する者は含まないとされています。
つまり、現行の法律では、管理監督者についてはタイムカードを打刻するほどの正確な労働時間の把握を求められてはいないのです。
しかし昨今、働き方改革によって一般労働者の残業を減らす一方、労働時間の概念をもたない管理監督者に業務の負担が集中しているという指摘も多く聞きます。管理監督者も健康管理されるべき人なのです。
そこで「働き方改革関連法」では、労働基準法ではなく労働安全衛生法により、管理監督者を含むすべての労働者について労働時間を把握するよう改正されました。
なお、前述の医師による面接指導をすべき一定時間は、現在、時間外・休日労働が月100時間を超える場合ですが、改正により月80時間超になります。
また今回の改正では、月80時間以上の時間外・休日労働をした労働者について、本人へその旨を通知する義務、産業医の選任義務のある事業所では、その者の氏名等を産業医へ通知する義務も新たに設けられています。
このように、タイムカードなどによる労働時間の把握は、健康管理の上で重要性が高まってくるのです。
たとえば、「課長以上を管理監督者とする」などの一律の取り扱いは、いわゆる「名ばかり管理職」として、本来は労働基準法の管理監督者でない者までを、労働時間などの適用除外とする誤った取り扱いを招くことがあります。
労働基準法の管理監督者とは、部長や工場長など「経営者と一体的な立場にある者」をいい、「職務内容、責任・権限」「勤務態様」「賃金等の待遇」が管理監督者として相応しいものであることが要件になります。
管理監督者でないとすると、健康管理のためだけではなく、当然、労働基準法の種々の規制もかかってきます。「働き方改革関連法」による残業上限規制は、このような「名ばかり管理職」にも注意しなければなりません。