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パートタイマー、契約社員、派遣社員など非正規労働員について、正社員と比べ待遇に格差があると問題になっています。
そこで、いわゆる「同一労働同一賃金」のルールが見直されました。
「同一労働同一賃金」とは、「仕事が同じであれば、賃金も同じにすべき」という考え方ですが、同じ業務をおこなうすべての労働者について、同じ賃金にしなければならないということではありません。正社員と非正規労働者との「不合理」な待遇格差を禁止するものです。「不合理であってはならない」ということは、「合理的であること」まで求められているのではなく、客観的に納得できないような格差を禁じているのです。
「同一労働同一賃金」については、もともと、パート労働法でパートタイマー(短時間労働者)について、労働契約法で有期契約労働者について、不合理な待遇格差を禁止していました。
今回の改正では、労働契約法のこの規定が削除され、パート労働法の対象に有期契約労働者が組み込まれることになりました。
これは、話し合いや裁判などによる民事的解決を前提にする労働契約法から、行政指導などを前提とするパート労働法へ規制をバトンタッチすることで、より積極的な解決を図ることにしたものです。
あわせて、不合理であるかどうかの判断基準としてガイドラインの策定など待遇差を明確化するための見直しがおこなわれています。
なお、派遣法により派遣社員についてもパート労働法と同様の規制を設けるものとなっていますが、ここでは解説を省略します。
社内には様々な仕事があり、社員の能力や経験なども人それぞれですから、不合理がどうかの判断は、次の3つの要素を考慮し判断されます。
たとえば、業務の責任の程度が異なるのであれば、それに応じて賃金に差があることを不合理とは考えないでしょう。
逆に、これらが同じなのに格差があれば、働いていて不満を感じることでしょう。
なお、待遇差については、「賃金」だけでなく、「教育訓練」「福利厚生」も比較対象に含まれています。
今回の改正では、「個々の待遇をごとに」判断すべきと条文が追加されました。これはつまり、賃金の総額を見て判断するのではなく、個々の手当など1つひとつについて待遇差を見ていくということです。
これについては、2018年6月にあった「同一労働同一賃金」に関する2つの最高裁判決「長澤運輸事件」「ハマキョウレックス事件」でも同様の考えが示されています。
この2つの最高裁判決から、「同一労働同一賃金」の判断の事例を見てみましょう。
ただし、このような判決結果は、企業ごとの事情を考慮するものですから、同じ手当についてほかの企業でも同様の判断がされるものではありません。
賃金(特に諸手当)や、福利厚生、教育訓練などの処遇について、1つひとつちがいをチェックしておきましょう。なお、パート労働法では、次のような説明義務も定めていて、③が改正で追加されています。
労働者は、たとえば年休が10日ある場合でも、子供の学校行事に4日、旅行に5日消化したいなどと希望があるかもしれません。
省令では、使用者は時季指定をおこなうにあたっては、労働者から意見を聴取して、その意思を尊重するよう努めることとしています。
一人ひとり時季を指定するのも大変な手間ですから本来は自発的に取得してもらう方がよいはずです。そのためには、取得しづらい状況を変えていく必要があるでしょう。時間単位年休の導入なども1つの方策です。