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人事労務の法律教室-44
~年次有給休暇の時季指定義務~

6月に成立した「働き方改革関連法」について、主な改正事項を確認していきましょう。
今回は、2019年4月から施行される「使用者からの年次有給有価の時季指定義務」です。
○年5日分を時季指定

日本の年休消化率は50%未満を推移しており、国際的にも非常に低い水準です。政府は2020年までにこれを70%にすると目標を掲げていますがこのままでは実現は難しいでしょう。

年休を消化しない理由として多いのは「休める空気ではない」「同僚に迷惑がかかる」「上司や同僚が消化しないから」というものです。

そこで今回法律が改正され、年休のうち5日分について使用者側から時季を指定して与えなければならないことになりました。これは使用者の義務です。「年休は5日以上消化するようにしてください」などと従業員に声をかけるだけでは不十分で、「あなたは〇月〇日に消化してください」と労働者ごとに時季も指定しなければなりません。

○年休10日以上の人が対象

この制度の対象者は年休を10日以上付与された労働者です。管理監督者も含まれます。

フルタイムの人であれば入社6ヵ月で出勤率が8割以上の場合に10日付与され、対象となります。パートタイマーの場合は下の表のように通常よりも少ない日数が付与される仕組みですが、入社当初は対象とならない人でも勤続年数が長くなると10日以上付与され対象となる場合があります。

パートタイマーに年休を与える習慣がなかった事業主は今後注意が必要です。「5日分を時季指定して与える義務」に違反した場合は30万円以下の罰金が定められています。

年休の付与日数と時季指定の対象

    雇入日から起算した継続勤務期間ごとの年次有給休暇日数
週所定
労働時間
週所定
労働日数
1年間の
所定労働日数
6ヵ月 1年
6ヵ月
2年
6ヵ月
3年
6ヵ月
4年
6ヵ月
5年
6ヵ月
6年
6ヵ月以上
30時間以上   10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
30時間
未満
5日以上 217日以上
4日 169~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日
○年休管理簿を作成

基準日(年休が発生した日)から1年以内※1に、労働者ごとに時季を定めなければなりません。対象者は誰なのか、いつ取得させるか、実際にいつ取得できたかなど、労働者一人ひとりの年休の取得状況を把握しなければなりません。そのため年休の管理簿を作成し、3年間保存することも義務付けられています。

※1 全員4月1日に年休を付与するなど基準日を統一している場合の対応方法は省令で詳しく示されています。

○労働者がすでに消化したときは

5日分の時季指定をしていたとしても、計画的付与※2や労働者がみずから申し出て3日分を消化したのであれば、使用者から時季を指定して与える義務は2日分になります。

労働者が5日分以上消化したのであれば、もう時季指定する義務はありません。逆に、法律上の義務がなくなったのに「〇月〇日に消化しなさい」と命じることはできません。

※2年休のうち5日を超える分について労使協定を結び、計画的に消化日を割り振る制度。

○一方的に時季を決めてもいい?

労働者は、たとえば年休が10日ある場合でも、子供の学校行事に4日、旅行に5日消化したいなどと希望があるかもしれません。

省令では、使用者は時季指定をおこなうにあたっては、労働者から意見を聴取して、その意思を尊重するよう努めることとしています。

一人ひとり時季を指定するのも大変な手間ですから本来は自発的に取得してもらう方がよいはずです。そのためには、取得しづらい状況を変えていく必要があるでしょう。時間単位年休の導入なども1つの方策です。

ポイント
  • 年休が10日以上付与された労働者が対象(繰越分は含まず)
  • パートタイマーも勤務により対象に
  • 基準日(年休が発生した日)から1年以内に消化させること
  • 管理簿を作って3年間保存
  • 時季指定については労働者の意見をきいて尊重すること
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