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日本の年休消化率は50%未満を推移しており、国際的にも非常に低い水準です。政府は2020年までにこれを70%にすると目標を掲げていますがこのままでは実現は難しいでしょう。
年休を消化しない理由として多いのは「休める空気ではない」「同僚に迷惑がかかる」「上司や同僚が消化しないから」というものです。
そこで今回法律が改正され、年休のうち5日分について使用者側から時季を指定して与えなければならないことになりました。これは使用者の義務です。「年休は5日以上消化するようにしてください」などと従業員に声をかけるだけでは不十分で、「あなたは〇月〇日に消化してください」と労働者ごとに時季も指定しなければなりません。
この制度の対象者は年休を10日以上付与された労働者です。管理監督者も含まれます。
フルタイムの人であれば入社6ヵ月で出勤率が8割以上の場合に10日付与され、対象となります。パートタイマーの場合は下の表のように通常よりも少ない日数が付与される仕組みですが、入社当初は対象とならない人でも勤続年数が長くなると10日以上付与され対象となる場合があります。
パートタイマーに年休を与える習慣がなかった事業主は今後注意が必要です。「5日分を時季指定して与える義務」に違反した場合は30万円以下の罰金が定められています。
  |   | 雇入日から起算した継続勤務期間ごとの年次有給休暇日数 | |||||||
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週所定 労働時間 |
週所定 労働日数 |
1年間の 所定労働日数 |
6ヵ月 | 1年 6ヵ月 |
2年 6ヵ月 |
3年 6ヵ月 |
4年 6ヵ月 |
5年 6ヵ月 |
6年 6ヵ月以上 |
30時間以上 |   | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 | |
30時間 未満 |
5日以上 | 217日以上 | |||||||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 | |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
基準日(年休が発生した日)から1年以内※1に、労働者ごとに時季を定めなければなりません。対象者は誰なのか、いつ取得させるか、実際にいつ取得できたかなど、労働者一人ひとりの年休の取得状況を把握しなければなりません。そのため年休の管理簿を作成し、3年間保存することも義務付けられています。
※1 全員4月1日に年休を付与するなど基準日を統一している場合の対応方法は省令で詳しく示されています。
5日分の時季指定をしていたとしても、計画的付与※2や労働者がみずから申し出て3日分を消化したのであれば、使用者から時季を指定して与える義務は2日分になります。
労働者が5日分以上消化したのであれば、もう時季指定する義務はありません。逆に、法律上の義務がなくなったのに「〇月〇日に消化しなさい」と命じることはできません。
※2年休のうち5日を超える分について労使協定を結び、計画的に消化日を割り振る制度。
労働者は、たとえば年休が10日ある場合でも、子供の学校行事に4日、旅行に5日消化したいなどと希望があるかもしれません。
省令では、使用者は時季指定をおこなうにあたっては、労働者から意見を聴取して、その意思を尊重するよう努めることとしています。
一人ひとり時季を指定するのも大変な手間ですから本来は自発的に取得してもらう方がよいはずです。そのためには、取得しづらい状況を変えていく必要があるでしょう。時間単位年休の導入なども1つの方策です。