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人事労務の法律教室-42
~フレックスタイム制はどう変わる?~

6月29日に成立した「働き方改革関連法案」について、主な改正事項を確認していきましょう。
今回は、2019年4月から施行される「フレックスタイム制の清算期間の延長」について見ていきます。
○月によって繁閑の差がある業務に有効

フレックスタイム制は、1日の労働時間の長さを決めず、始業や終業の時刻を労働者が自分で決めて働くことができる制度です。一定期間(清算期間と言います)を平均し、週40時間の範囲であれば法定労働時間内として取り扱うことができます。そのうち1日が8時間を超えても残業代を支払わなくてもよいというものです。

現行のフレックスタイム制では、清算期間は「1ヶ月以内」と決められています。たとえば月末は忙しいが月初は余裕があるなど、1ヶ月の中で繁閑がある場合は有効なのですが、3月は忙しいが5月は業務が少ないなど、月によって繁閑の差がある場合は、労働時間の調整ができませんでした。

そこで今回、法律が改正され、清算期間を「3ヶ月以内」で定めることができるようになりました。

これにより、3月は忙しいからたくさん働き、その分5月は短めにするといった調整が可能になります。子育て中の労働者が、8月の労働時間を短くして夏休み中の子供と過ごす時間を確保しやすくするなど、柔軟な働き方ができることによってワークライフバランスの向上にもつながります。

○3ヶ月ごとに清算すればよい

たとえば清算期間を3ヶ月と定めた場合は、3ヶ月ごとに労働時間を計算し、実際の労働時間を計算し、実際の労働時間が総労働時間(清算期間に勤務すべき労働時間)を超えた分については差額の支払いを、足りなかった分は賃金の控除をおこなうことになります(図参照)。

なお、清算期間の区切り方は、繁忙期を最初に持ってきた方が良いと考えます。たとえば3月が繁忙期なら「3・4・5月」で1つの清算期間とするのです。その方が、4月・5月で社員が時間を調整しやすいからです。

○長時間労働は1ヶ月ごとに支払う

利便性が高まる反面、1ヶ月の労働時間が長くなりすぎると労働者の健康リスクが高まることが懸念されます。そこで、次のような要件が設けられています。

  • ・労使協定の届出を義務化
  • ・各月で週平均50時間を超えた場合はその各月で割増賃金を支払う

フレックスタイム制は就業規則に定め、労使協定を締結することで導入できます。清算期間が1ヶ月以内のフレックスタイム制については労使協定を届け出る必要はありませんが、1ヶ月を超えるフレックスタイム制は、労使協定を労働基準監督署に届け出ることが義務付けられました。

また、ほかの月の労働時間を短くして調整できるとしても、1ヶ月の労働時間が極端に長くなることは好ましくありません。

そのため、1ヶ月単月の実労働時間を平均して週50時間を超えた場合は、「3ヶ月ごと」ではなく「その月に」割増賃金を支払わなければならないとされています。

また、まだ正式に確定したわけではありませんが、1ヶ月単月や3ヶ月以内の期間を平均して月60時間を超える時間外労働あった場合は、越えた部分について150%の割増賃金率が適用される見込みです。

○中小企業は平成35年3月まで猶予

こうした要件があるため、長時間労働が頻繁にある職場では、3ヶ月以内のフレックスタイム制を導入すると給与計算が煩雑になる恐れがあるので注意が必要です。

このほか、清算期間を3ヶ月以内にすると、労働者が各月の労働時間数を把握しにくくなることが懸念されるため、各月の労働時間数の実績を通知することが望ましいとされています。

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