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フレックスタイム制を導入しましたが、欠勤控除をするのは間違っているのではないかと社員から苦情がありました。欠勤した場合の取り扱いを教えてください。
フレックスタイム制の労働者については、一定期間の勤務すべき時間を満たしていれば、基本給部分を働いたことになるため、欠勤控除はできません。ただし、ペナルティとして「皆勤手当」を減額したり、賞与の査定に差をつけることなどは可能です。
フレックスタイム制は、始業・終業時刻を労働者の決定にゆだねる制度です。1ヶ月以内の一定期間(「清算期間」といいます)の「総労働時間」と「標準となる1日の労働時間」などを定め、これらをもとに労働者は勤務します。
たとえば、「標準となる1日の労働時間」を8時間、清算期間の総労働時間を「標準となる1日の労働時間×所定労働日数」(例:8時間×20日=160時間)などと定めます。
なおフレックスタイム制は、勤務時間を完全に労働者の自由とするだけではなく、勤務できる時間帯「フレキシブルタイム」や、必ず勤務すべき時間帯「コアタイム」を設定することができます(図1参照)。
法律上必ず設けなければならないものではありませんが、フレキシブルタイムは労働者が深夜など極端な時間に勤務するのを制限できますし、コアタイムは会社の種々の連絡・会議の設定などに役立つので設定した方が良いでしょう。
休憩時間とは、行政通達では「労働からの解放が保障されている時間」と定義されています。
喫煙中一時的に仕事をしていないとしても、上司から声がかかったり、何かあればすぐ業務に戻って対応しなければならないのであれば、それは手待ち時間(労働時間)であって休憩時間ではありません。
実際にたばこ休憩の時間の取り扱いについては裁判も起きています。過去の裁判例では、喫煙場所が職場から離れているかどうか、何かあったときに対応できるかといった要素で、たばこ休憩が「労働時間」なのか「休憩時間」なのかを判断しています。
始業・終業時間を労働者が決めるという点では、裁量労働制と似ていますが、フレックスタイム制では実労働時間を把握し、これにもとづき賃金を支払いうという点が異なります。
実労働時間が清算期間の「総労働時間」として定められた時間を超える場合は、その超えた時間について残業代を支払います。
逆に、定められた時間に満たない場合はその時間分の賃金を控除するか、または次月に不足時間を持ち越すこともできます。ただ、制度の趣旨としては不足分の賃金を控除するよりも次月に労働時間を持ち越すべきと考えられています。ただし、持ち越した時間と次月の総労働時間の合計時間が法定労働時間の総枠を超えてはいけません。また、持ち越し時間分を含めて次月の実労働が法定労働時間を超えたときは割増賃金が必要になります(図2参照)。
このような超過や不足が大きくならないように、月の途中で実労働時間をいったん集計し、社員に知らせるなどの工夫が必要でしょう。
フレックスタイム制は、始業・終業時刻の決定が労働者にゆだねられているので、本来、遅刻や早退は考えません。ただし、コアタイムに遅刻してきた場合などにペナルティがなければモラルが保たれません。そこで「皆勤手当」を設け、これを減額などすることはできます。または、制裁として就業規則に定め法定の限度の範囲で減給処分するか、あるいは勤務態度の評価として賞与の最低に差をつけることはできます。
なお、フレックスタイム制は出勤するかどうかまで労働者の自由ではないので、労働日に出勤しなければ欠勤になります。ただし、総労働時間を満たしているのであれば基本給分の勤務はしているので、欠勤控除はできません。遅刻に準じて皆勤手当の減額などで対応することになります。