M&Aロゴ

人事労務の法律教室-39
~喫煙休憩中の賃金を控除してもいい?~

たばこ休憩について、たばこを吸わない社員から不満の声が上がっています。
たばこ休憩の時間分の賃金を控除するようにしようと思いますが、何か問題はありますか?

たばこ休憩が法律上の「休憩時間」に該当する場合は賃金控除が可能ですが、時間管理が煩雑になりそうです。非喫煙者に「禁煙手当」を支給し、不満解消とともに社員の禁煙を応援している企業もあります。

○喫煙中は休憩時間か労働時間か

分煙が進む中、所定労働時間中に喫煙室などへ行くたばこ休憩は、労働基準法でいうところの「休憩時間」なのか「労働時間」なのかという問題です。

休憩時間であれば賃金を支払う必要がないため賃金控除が可能ですが、労働時間であれば賃金控除はできません。

たばこ休憩はその名のとおり「休憩」しているのですから当然「休憩時間」だと思われるかもしれません。しかし、法律上は必ずしもそうとは言えないのです。

○過去の裁判例では

休憩時間とは、行政通達では「労働からの解放が保障されている時間」と定義されています。

喫煙中一時的に仕事をしていないとしても、上司から声がかかったり、何かあればすぐ業務に戻って対応しなければならないのであれば、それは手待ち時間(労働時間)であって休憩時間ではありません。

実際にたばこ休憩の時間の取り扱いについては裁判も起きています。過去の裁判例では、喫煙場所が職場から離れているかどうか、何かあったときに対応できるかといった要素で、たばこ休憩が「労働時間」なのか「休憩時間」なのかを判断しています。

○喫煙中の賃金を控除できる?

たばこ休憩と言っても、何かあればすぐに戻らなければならない状態であれば「労働時間」と判断されますから賃金を控除することはできません。

一方、たばこ休憩中は完全に労働からの解放が保障されており、法律上の「休憩時間」となるのであれば賃金を控除することが可能です。

ただ、たばこ休憩の時間を正確に把握するのは手間がかかります。たとえば、喫煙室への入退室記録をつける、屋外に喫煙所がある場合は入退館記録をもとに休憩時間を計算するといった方法になるでしょうか。できないことはありませんが、管理が煩雑になりそうです。

また、法律上の「休憩時間」に該当するとしても、いきなり賃金を控除するのはトラブルや混乱のもととなるでしょう。社内通達で明示し、猶予期間を設けるなどの手順を踏むべきです。

○賃金控除できないが不満の声が…

先ほど、たばこ休憩中でも何かあったときに戻って対応しなければならないのなら「労働時間」であり賃金控除はできないと説明しました。

しかし、何かあったときに対応するとしても、たばこ休憩によって実際に業務をおこなっていない時間がたびたび生じている状態は、たばこを吸わない社員から見て不公平感があるでしょう

非喫煙者でもコーヒーを淹れに行くなど席を立つことはありますが、それぞれのトータルの離席時間を考えるとやはり喫煙者のたばこ休憩の方が明らかに長いケースが多いと思われます。

社員から不満の声が上がっているのであれば、何らかの対策を検討する必要があるでしょう。

○不公平感を解消する方法

たとえば、離席時間や頻度が節度を超え目に余る場合は人事評価でマイナス評価をつけるという方法を実施している企業があるかもしれません。しかし、人によって節度のとらえ方もまちまちですから、これで不公平感をなくすのは難しいと思われます。

喫煙者の賃金を控除したりマイナス評価するのではなく、たばこを吸わない社員の方にメリットを与えるというのはどうでしょうか?たとえば、非喫煙者に毎月「禁煙手当」を支給するという方法があります。禁煙手当は、実際に導入している企業もあります。

現在健康増進法の改正が検討されており、今後ますます職場の禁煙・分煙ルールは厳しくなると予想されます。

たばこ休憩中の賃金控除をして解決とするのではなく、社員の健康のために禁煙を後押しするようなやり方を検討した方が良いかもしれません。

Copyrights 2008-2009 M&A Allright reserved.