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人事労務の法律教室-38
~外注業者でも労働者と判断されることがある!?~

時間外労働を削減するため、当社の配送業務の外注化を進めています。ただ宅配業者などでは効率よく配送できないため、当社専属でできる配送業者を募集し、時間帯など当社の業務の都合に合った方法をとってもらっています。先日、その業者が交通事故を起こしてしまい、賠償額の一部をふたんしてもらえないかといってきました。当社で支払う義務はあるのでしょうか?

契約上は外注としての委託契約であっても、「自社専属」の配送者については、事故がったときの責任などをめぐる裁判で、実質的に自社の「労働者」であり、企業に責任の負担を命じたものがあります。もし、ご質問のケースが労働者と判断されれば、使用者として賠償責任を負うことになります。
厚生労働省の研究会でまとめられた資料では、労働者であるかどうかの判断は、「事業に使用されている」「賃金が支払われている」の2つが主なポイントになるとしています

○管理しすぎると「労働者」?

たとえ外注業者であっても、企業は自社の事業にとって都合のよい状況で取引することを望むでしょう。たとえば、緊急対応できるよう他から業務を受けない条件にするとか、安く配送できるよう車両は自社が提供するものを使わせるなどです。そうすると、実質的に自社で雇用する労働者とあまり変わらなくなる場合があります。

○仕事を受ける自由はあるか

自社のために働く者が「労働者」なのか「外注業者」なのか、以前に厚生労働省の研究会がまとめた判断基準は以下のとおりです。このような基準をもとに総合的に判断されます。

《労働者性の判断基準》

A.使用されているか(使用従属性)
①仕事の依頼を受けるかどうかの自由があるか
②業務遂行上の指示の有無
③拘束性の有無
④代替性の有無
B.賃金が支払われているか(報酬の労務対償性)
C.その他の補強事業
①事業者性の有無
②専属性の程度
③その他

たとえば、A.①「仕事の依頼を受けるかどうかの自由はあるか」とは、業者に仕事の依頼を断る自由があれば、労働者ではないと判断される重要な要素となります。ただし、専属下請のように事実上仕事の依頼を拒否することができない場合もあるので、断る自由がないからといって必ず労働者と判断されるわけではありません。

また、B.「賃金が支払われているか」とは、業者への報酬が、「配送料」など賃金と思われない名称で支払われていても、時間を単位として計算されている場合は、労働者であると判断されやすくなります。労働基準法の「賃金」は、名称にかかわらず「労働の対償」として支払われているものとされています。

その他にも、業者の使用する機械や器具が会社より無償貸与されている場合、事業者ではないと判断されやすくなります(機械、器具の負担関係)。他社の業務をおこなうことが制限され、専属性の程度が高くなるほど、労働者であると判断されやすくなります(専属性の程度)。これらの要素が、労働者かどうかの判断を補強することになります。

法改正により、労働者の時間外労働の規制強化が予定され、外注業者の利用が進むことも予想されます。しかし、自社の都合のよい契約にするほど実質的に労働者ではないかという問題をはらむことになるかも知れません。また、働き方が多様化し、在宅ワーカーなども増えていることから、自営型テレワーカーのガイドラインも見直されるなど、行政も注目しています。

人手不足にあって「労働者」の確保を進めるのか、「外注業者」を活用していくのかなど、企業の工夫が求められています。

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