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人事労務の法律教室-37
~「36協定」は誰と締結すればいい?~

当社に労働組合ができました。設立者の呼びかけで社員数名が加入しているそうです。今後「36協定」はこの労働組合と締結することになるのですか?

法定時間外労働、休日労働をおこなわせるのに必要な「36協定(正しくは「時間外労働・休日労働に関する協定」)」を誰と締結するかについては、法律で要件が定められています。
労働組合と協定を締結する場合、組合加入者の人数が事業場の労働者の過半数である必要があります。組合加入者の人数が過半数に満たない場合は、労働者の中から過半数代表を選出し、この代表者と協定を締結することになります。

○誰と協定を結ぶのか

原則として、労働者を法定労働時間外・休日に労働させることはできません。このような労働をさせるには、労使協定(36協定)の締結と届出をするよう、法律に義務付けられています。
この「36協定」を締結する際は、その都度、その事業場の①労働者の過半数で組織する労働組合(過半数組合)がある場合はその労働組合、②過半数組合がない場合は労働者の過半数を代表するもの(過半数代表者)と、書面による協定をしなければなりません。
※36協定の締結・届出に代えて、労使委員会(労基法第38条の4第1項)、労働時間等設定改善委員会を決議・届出により、時間外・休日労働をおこなわせることができます。

【優先】
労働者の過半数で組織される労働組合

[労働組合がない場合]
労働者の過半数を代表するもの

○「過半数組合」であるか

「協定の当事者となるのは「労働者の過半数で組織する組合」です。ここでいう「労働者」とは、その事業場に使用されているすべての労働者ですから、正社員のみならず、パートなど含めて過半数に満たない場合は、認められません。

労働組合員数 +
すべての労働者(パートなども含む)

50%

○「過半数代表者」であるか

過半数労働がない場合、「労働者の過半数を代表する者」を協定当事者とします。この「過半数代表者」も、正社員だけでなく、パートやアルバイトなど事業場のすべての労働者の過半数を代表している必要があります。
選出方法も確認しましょう。まず、正社員だけでなく、パートやアルバイトなどを含めたすべての労働者が手続きに参加できるようにする必要があります。
選出手続は、労働者の過半数がその人の選出を支持していることが明確になる民主的な手続きがとられている必要があります。民主的な手続きとは、たとえば投票、挙手などです。使用者が指名した者などを選任手続きを経ずに代表にしても、その36協定は無効です。
なお、管理監督者を「過半数代表者」に選ぶことはできません。管理監督者は、経営者と一体的な立場にあるためです。

○協定内容を周知する

労働者が、労使協定に定める時間を超えて時間外労働をしてしまう企業では、そもそも何時間までが許されるのか協定内容が周知されていないことがあります。
法律では、労働基準監督署に届け出た協定内容を労働者に周知するよう義務付けていますから、届出が済んだだけで安心してはいけません。周知とは、「常時各作業場の見やすい場所に提示する」「書面を交付する」などです。

労働基準監督署では、協定の受付に際し、協定を締結した労働者が要件をみたしているかどうかまで確認していません。しかし、大手広告代理店が社員に違法残業をさせ過労自殺させてしまった事件では、東京地検の捜査により、同社の労働組合が労働者の過半数で組織されていなかったため36協定が無効と判断されました。このように重大な事件などがあれば、手続きの些細な状況まで確認されます。万一誤りがあれば、会社の責任が厳しく問われることにもなるのです。
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