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奨学金変換を支援して人材確保につなげている会社があるというニュースを見ました。うちの会社でも検討したいのですが、導入にあたってどんな点に注意すればよいでしょうか?
支援する金額はもちろん、毎月支給するのか一時金なのか、対象者の範囲はどうするのかといったことを検討する必要があります。社員の定着が目的であって「○年以内に退職した場合は返金を求める」といった方法は違法となる可能性があります。
大学進学が大衆化し学費が高止まりする一方で、親世代の収入は伸びず、家計に重い負担がかかっています。
調査*によると34歳以下の2人に1人が学生時代に奨学金を利用しており、借入総額は平均313万円にのぼっています。 ※奨学金に関するアンケート(労働者福祉中央協議会)
奨学金返済のために、本来のやりたい仕事ではなく少しでも初任給の良い仕事を選ぶ学生もいると思います。
例えば、正社員が週40時間、月20日の所定労働時間・所定労働日数なら、パートタイマーであっても週30時間以上かつ月15日以上の人は加入しなければならないことになります。これを「4分の3基準」といいます。
こうした中、奨学金を借りている学生を対象に、入学後、奨学金の返済支援として給与や賞与に一定額を上乗せして支給する企業が近年みられるようになってきました。企業としてはユニークな制度としてPRになるほか、新入社員の定着率アップを図れるなど有力な採用戦略となります。
こうした奨学金の返済支援制度を導入するにあたっては、次のような事項を検討しておく必要があるでしょう。
定着率アップが狙いの場合、返済支援をしたいのにすぐ辞めてしまっては困るため、「○年以内に退職した場合は支援した金額を返還してもらう」と定めようとする考える企業があるかもしれません。しかし、これは問題があります。
労働基準法では、労働契約の不履行について、違約金を定めたり損害賠償を予定する契約を禁止しています。「○年以内に退職したら○万円払ってもらう」といった契約を結べば労働者の退職の自由を奪うことになり、不当な足止め策として利用されるからです。
奨学金の返済支援として一定額を支給しておきながら、退職するなら支給した分を返せというのは、違法となる可能性があります。
定着を狙って支給する場合は、事例企業のように「勤続○年以上の社員に支給」という方法にした方が安全です。
ただし実際には、就職したばかりで賃金が低いときこそ返済が苦しいという事情もあるため、「入社後○年間だけ毎月支給」というように期限を設けて支給する例の方が多いようです。
最近では、都道府県が若者のUターンや地元企業の人で不足解消を狙って、奨学金の返還支援をしているケースもあります。
たとえば京都府では奨学金の返済支援制度がある府内の中小企業を対象に、社員の入社後6年間、企業の負担額の半額を補助する制度がスタートしています。
富山県では、半額補助のほか、応募学生と地元支援企業の合同企業会を開催するなど採用のチャンスが広がる仕組みを作っています。