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人事労務の法律教室-29 ~パートタイマーに残業を命じることはできない?~

1日5時間勤務でパートタイマーを雇っています。これまで残業をしてもらったことはないのですが、先日急な受注があり、パートタイマーにも残業を頼んだところ「パートタイマーは残業をしなくていいはずだ」と断られました。パートタイマーに残業を命じることはできないのでしょうか?

労働契約書を確認して「残業あり」の契約となっていれば残業を命じることができます。ただ、育児などの都合でパートタイマーという働き方を選んでいる人も多いため安易に残業をさせるのは控えた方がよいと考えます。

○労働契約書では「残業あり」となっているか

一般的に、残業をさせるためには次の2点が必要です。

  • ①就業規則の規定「残業を命じることがある」と就業規定に規定しておくことで残業を命じることができるようになります。
  • ②36協定1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて労働させても違法とならないためには「時間外・休日労働に関する協定(36協定)」の締結・届出が必要です。

これらが備わっていれば、個別に同意を取らなくても残業を命じることができます。ただし、就業規定で残業を命じると規定していても、個別の労働契約で「残業なし」とした場合は、個別の労働契約の方が労働者にとって有利な条件ですから、そちらが優先されます。

パートタイマーとの労働契約書(または労働条件通知書)を確認してください。「所定外労働の有無」は必ず明示しなければならない事項なので記載があるはずです。「残業なし」と明示しているのであれば残業を命じることはできません。

○「残業あり」に変更できる?

今後、残業を命じたいのであれば、「残業あり」の契約に変更する必要があります。契約の変更は一方的にはできませんから、パートタイマーに合意してもらう必要があります。なお、契約内容の変更に応じないからといって解雇することは基本的に認められません。

○「残業あり」の契約でも…

ご質問のケースのように、実際ほとんど残業はない職場であったとしても、少しでも可能性があるなら労働契約書には「残業あり」としておいた方が安全でしょう。

ただ、「残業あり」で契約したからと言って、いくらでも残業させていいとは考えないでください。

なぜフルタイムではなくパートタイマーとして働いているかを考えるとわかるはずです。育児や介護、家事などの都合により時間制約があるから短時間で働いているという人も多いのです。それなのに会社の都合で残業を無理強いすると、働き続けることができず退職してしまうことにもなりかねません。

○パートタイマーには残業をさせないように努めるべき

国の指針では、パートタイマーの雇用管理について企業に次のような努力義務を課しています。

  • ①パートタイマーの労働時間・労働日を定めたり変更する際には、パートタイマーの事情を十分考慮すること
  • ②パートタイマーは、できるだけ所定労働時間を超えて、または所定労働日以外の日には働かせないこと

パートタイマーにはできる限り残業をさせないことが望ましいと言えるでしょう。どうしてもパートタイマーに残業をさせる可能性がある場合は、採用の段階で残業が可能かどうかの確認をし、どのような場合に何時間ほど残業を命じることがあるのか具体的に説明するなど、事前に十分な話し合いをしておいた方がよいでしょう。

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