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社員が週末にアルバイトをしていることが発覚しました。当社では副業を禁止しているため、懲戒処分にしたいのですが、問題ないでしょうか?
単に副業をしていたというだけで懲戒処分にするのは難しいでしょう。週末にアルバイトをしているせいで、遅刻や欠勤、ミスが増えたなど本業に支障が出ていて初めて懲戒処分が検討できます。
副業禁止という規定は労働基準法にはありません。法律で禁止されているのは公務員だけです。実際には民間企業でも就業規則で副業を禁止している会社は多いのですが、これは任意のルールに過ぎません。では、副業を禁止し、これに違反した場合に懲戒処分をおこなうというルールは有効なのでしょうか?
社員には職業選択の事由がありますし、勤務時間外の私生活はどのように過ごそうと本人の自由です。副業を禁止することは、この自由を侵害するものとも言えます。しかし、業務に支障が出るような副業は、会社も認めるわけにはいかないでしょう。 ですから、副業を禁止する規定は一定範囲では有効と考えられます。
就業規則で副業を禁止しているのに副業をしていた場合、懲戒処分にできるのでしょうか?
どんな事情があろうと、どんな副業であろうと、一律に禁止して、これに違反したら懲戒処分にするというのは問題があります。先ほども説明した通り、副業を禁止する規定は「一定範囲で」有効と解釈されているからです。「一定範囲」とは、例えば次のような場合です。
就業規則に違反して副業をしているが、ミスや遅刻が増えたわけでもなく、本来の業務に支障が出ていないという場合は、懲戒処分を科すのは難しいと考えられます。本人に副業をしなければならない事情を聞いたり、本業をおろそかにしないよう注意する程度に留めておくべきでしょう。遅刻などが増えて懲戒処分をおこなう場合でも、してしまった行為に対して処分の内容が重くなり過ぎないよう、慎重に検討する必要があります。
一律に禁止すると、こっそり隠れて副業をする社員が出てきて、会社側でどのような副業をしているのか把握できないという問題が出てきます。
そこで、一律禁止ではなく、「許可制」や「届出制」にするという方法があります。あらかじめ禁止業務を決めておいたり、一定以上の遅刻・欠勤があれば副業の許可を取り消す、本業における緊急な残業・休日出勤を優先するなど、ルールを決めておくことで、トラブルを防ぐことができるでしょう。
副業をすると本業に身が入らないと考え、多くの会社が副業を禁止していますが、最近はそれも変わりつつあります。
「ビジネスセンスが磨かれ自立の一歩につながる」「社外でも経験によってスキルアップし、それが本業に還元される」といった考えから、ベンチャー企業などを中心に「副業OK」とする動きが広がっています。昨年4月には大手製薬会社が副業を全面解禁して話題になりました。優秀で意欲的な人ほど、そうした職場を魅力的に感じて集まってくるという面もあるでしょう。
政府もまた、柔軟な働き方を広げる政策の中で副業を促進したい考えを示しています。一方で、副業によって健康を害するような長時間労働を招いては本末転倒になるため、副業について指針を策定するなどルール作りを進めるとしています。