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アルバイトから雇用契約書が欲しいと言われました。条件は求人誌に掲載していますし、アルバイトは入れ替わりが激しいので契約書を作るのが面倒です。正社員でもないのに、いちいち契約書など必要でしょうか?
法律では、雇い入れ時に文書で労働条件を明示することを事業主に義務付けています。トラブルを防ぐためにも労働条件を契約書(あるいは通知書)ではっきりさせておくことは大切です。ひな形を利用すれば作成の手間もかかりません。
労働基準法が定めている「割増賃金」は、①法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働させたとき、②深夜(22時から5時まで)に労働させたとき、③法定休日に労働させたとき、の3つの場合に支払う必要があります。
トラブルを回避する上で最も大切なのが、どういう契約なのか労働条件をはっきりさせることです。そのため、雇い入れ時の労働条件の明示は法律で義務付けられています。
労働基準法で定められた5つの項目に加えて、アルバイトの場合はパートタイム労働法で定められた4項目も明示する必要があります(図表参照)。明示義務に違反した場合は罰則も設けられています。
正社員と違って、人数が多かったり、出入りが激しかったりして、いちいち雇用契約書や労働条件通知書を発行するのが面倒かもしれませんが、労働条件があいまいになっていることによってトラブルが多発するともっと面倒なことになります。 法令順守、そしてトラブルを未然に防ぐためにも労働条件通知書は必ず発行してほしいところです。
労働条件をはっきりさせておくことは、労働者が安心して働けるというだけでなく、会社にとって有利に働く場合もあります。
例えば、明示すべき項目に「契約期間」「更新の判断基準」があります。パートやアルバイトなど非正規雇用の場合は6ヶ月や1年など有期契約で雇用し、契約更新をする企業が多く見られます。ただし、漫然と更新を繰り返していると無期雇用と同じとみなされ、雇い止め(契約更新しないこと)が認められなくなる場合があります。 昨年7月に東京地裁で、コーヒー店のアルバイト店員が合計8年半の間、有期労働契約を33回更新した後に雇い止めをおこなったのは無効だとして200万円の支払いを求めた裁判がありました。
この裁判では、コーヒー店を運営する企業が契約更新の判断基準を明確に定めており、アルバイト店員がその基準を満たしていなかったこと、更新手続きが適切におこなわれていたことなどを理由に、会社側が勝訴しています。
どのように労働条件通知書を書けばよいのか分からないという会社は、厚生労働省が公表しているひな形をダウンロードして使うとよいでしょう。
ちなみに、会社から一方的に通知するのが労働条件通知書、会社と労働者の双方が納得して締結するのが雇用契約書です。労働条件通知書の末尾に使用者と労働者の記名押印欄を設けて雇用契約書とすることも可能です。
アルバイトに関しては、近年学生アルバイトの労使トラブルが多く、国が啓発キャンペーンを実施するなど対策に力を入れているところです。 雇う側も正しい知識をもって、違法な状態とならないように適切に雇い入れることが大切です。