M&Aロゴ

人事労務の法律教室-21 〜継続雇用者は無期雇用転換しなくていい?〜

無期転換ルールの特例ができたと聞きました。定年後、継続雇用している人については、5年を超えても無期雇用に転換しなくてもよいのですよね?

特例の適用を受けるためには、あらかじめ計画の認定を受ける必要があります。無期転換の申込権を持つ人が出てくるまでもう少し余裕がありますが、そろそろ手続きの準備を始めてもよい頃でしょう。

平成25年4月に改正労働契約法が施行され、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合は、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換できる制度(無期転換ルール)が始まりました。
現在、高年齢者雇用安定法(以下「高年法」といいます)により、原則65歳まで希望者全員の雇用確保が企業に義務付けられています。

一般的には60歳定年後1年以内の有期雇用契約を締結し、65歳を上限に契約更新を重ねるケースが多いでしょう。しかし、中には労使双方のニーズにより65歳を超えても契約更新をおこなうこともあるでしょう。
こうした場合、本来なら通算5年を超えているのですから無期転換ルールが適用されるところです。しかし、定年後の継続雇用者の場合、特例が設けられているのです。

○特例ってどんな内容?

特例の内容は、これまで無期雇用で雇ってきて定年を迎えた後、嘱託社員などとして有期契約で再雇用している高齢者については、定年後に引き続き雇用されている期間は無期転換の申込権が発生しないというものです。
特例の対象となる継続雇用者は、60歳以上の定年の場合に限り、一定のグループ企業で継続雇用された場合も含まれます。

もともと60歳前から有期契約だった人を60歳以降も有期契約で雇用する場合は含まれません。60歳以降、新たに雇用した有期契約社員も特例の対象とはなりません。

○事前に手続きが必要

特例の適用を受けるためには、事前に都道府県労働局から認定の受ける必要があります(監督署経由でも可)。
「事前に」というのは無期転換の申込権が発生する前に、という意味です。すでに定年を迎えた人が有期契約で何年か雇用されていても、まだ無期転換の申込権が発生していなければ間に合います。

無期転換ルールは平成25年4月よりスタートしたので、1年契約の更新制としている場合であれば、平成30年4月に初めて申込権を持つ人が出てくることになります。あと2年ほど余裕がありますが、そろそろ準備を始めてもよい頃でしょう。

計画の認定は、対象となる労働者ごとに受けるのではなく、事業主として一度受けておけばよいものです。また、事業所ごとに申請する必要はなく、本社で一括申請できます。

○措置を講じる必要がある

計画の認定を受けるためには、次の2点が必要です。

  1. 高年法に基づく雇用確保措置のいずれかを講じていること
  2. 下表のいずれかの措置(雇用管理に関する措置)を講じていること
    1. ①高年齢者雇用推進者の選任
    2. ②職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等
    3. ③作業施設・方法の改善
    4. ④健康管理、安全衛生の配慮
    5. ⑤職域の拡大
    6. ⑥職業能力を評価する仕組み、資格制度、専門職制度等の整備
    7. ⑦能力、職務等の要素を重視する賃金制度の整備
    8. ⑧勤務時間制度の弾力化
計画の認定申請をおこなう際は、1と2の措置を実施することがわかる資料の添付が求められます。 例えば、1については就業規則など。2の①「高年齢者雇用推進者の選任」を明らかにする資料であれば「高年齢者雇用状況報告書」のコピー、③「作業施設・方法の改善」であれば改善前と改善後の写真や図面などが考えられます。

○労働者に明示する

この特例を適用する場合は、「定年後引き続き雇用される期間は無期転換申込権が発生しないこと」を労働者に書面で明示しなければなりません。 厚生労働者では、この明示が含まれたモデル労働条件通知書を公表しています。

Copyrights 2008-2009 M&A Allright reserved.