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仕事に協力的ではなく、しょっちゅう同僚ともめたり、上司の注意に口答えするなど、協調性の足りない社員がいます。解雇しようと考えていますが、可能でしょうか?
協調性の不足から些細なトラブルを繰り返す社員については、その行為自体で解雇することは難しいため、まずは根気よく教育・指導し、改善を促すことが必要です。特に配置転換により、人間関係をやり直す機会を与えておくこともポイントになります。それでも改善されない場合に解雇を検討する方がよいでしょう。
上司、使用者にとって労働者は、勤務態度が良好で、職場の皆と強調し、会社へ貢献してほしいのは当然ですが、中には、人付き合いが苦手であったり、自己主張が強すぎたりと、職場で浮いてしまう人もでてきます。
しかし、誰しも多少の個性はあるもので、仕事は一応こなしているのであれば、まずは、うまく活用していくよう教育・指導を考えなくてはなりません。 一方で、たびたび同僚や顧客とトラブルになったり、これを上司が注意するとパワハラであるなどと反発するなど、業務に支障が出てくる場合もあります。このような場合は、やはり解雇も検討することになるでしょう。ただ、裁判で争う事態になれば、あくまでも「協調性不足」などが客観的に判断されることになります。
実際、多忙な日常の中で問題社員を指導することは煩わしく、何とか辞めさせようと、感情的に叱ってしまったり、仕事を与えなかったりというケースがあります。 このような対応をすると、労働者が労働基準監督署や弁護士に相談を持ち込むことになったり、裁判になれば、会社のパワハラを指摘されることにもなりかねません。 裁判で、協調性不足による解雇が認められた事例をみると、労働者の行為の程度はかなり悪質で、会社側が雇用維持のために粘り強く指導していたというケースが多いのです。
例えば、テレビ制作関連会社の事件では、協調性不足の問題だけでなく、刃物で人を傷つけていたことが判断要素となっています。協調性不足だけで解雇が有効になったと考えない方がよいでしょう。 この他、IT関連会社の事件では、業務指示違反など個々の行為は解雇に相当するほど重要なものではなかったのですが、上司らが日常的な注意を繰り返しおこなっており、人事評価制度などにより6年間にわたり業務遂行能力、勤務態度上の問題の改善を試みてきていたことが、解雇有効の判断要素となっています。 裁判で解雇有効と判断してもらうためには、客観的な証拠を残しておく必要があります。
協調性不足によってどのように業務への支障が出ていたのか、また、それについて、いつ、どのように指導したのかという記録を残しておくことが大切です。
協調性不足の場合には、特に配置転換をおこなうことが重要です。上司や同僚が悪いのだという言い訳をさせないためにも、一度違う職場に移し、それでも協調性不足が問題となれば労働者本人に原因があるということが明らかになりますし、会社としてやり直しの機会を与えたことにもなるのです。
協調性の不足する社員の行為によって、社内が混乱したり、顧客の信頼を失うこともあります。そのことを重く考え、懲戒解雇を検討するケースもあるでしょう。ただし、懲戒解雇が有効かどうかの基準は普通解雇よりもハードルが高いため、些細なトラブルを繰り返すケースでは、普通解雇を選択する方がよい場合もあります。
なお、実務的には、協調性の不足する社員は、解雇においても訴えを起こすなどの問題に発展しやすいと言えます。会社は、最終手段として解雇を視野に入れて対応しておくべきですが、まずは退職勧奨により労働者の合意を取ることも試みるべきでしょう。