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当社では社員旅行の積立金として3,000円を毎月給与から天引きしています。社員から旅行に参加しなかったときはその分を返金してほしいと言われました。参加しない人が増えると困るので返金はしない方針ですが問題ありますか?
旅行代として社員から預かっているお金ですから、旅行に参加しなかった人には当然返金すべきでしょう。親睦会が集めた親睦会費の中に旅行積立金も含まれているという場合は、また取扱いが変わってきますが、トラブルを避けるためにも旅行積立金と親睦会費は分けて管理し、旅行積立金は不参加の場合には返金するという方法が望ましいでしょう。
そ もそも給与からの天引きは自由にできるものではありません。労働基準法には賃金について「全額払いの原則」というルールがあります。会社の裁量で一方的に賃金から控除をおこなうことはできないのです。
ただし、税金や社会保険料など法令に定めがあるものや労使協定を締結しておこなう場合は、賃金の一部を控除することが可能です。 つまり、旅行積立金を控除するためには労使協定を締結しなければならないのです。
労使協定を締結すれば旅行積立金として給与から控除してお金を集めることは可能ですが、これはあくまでも社員旅行の費用にあてるために預かっているお金です。ですから当然、社員旅行に参加しなかった人には返金すべきでしょう。
社員旅行は全員参加すべきという考えの会社もありますが、家庭の事情などで参加できない人もいます。強制的に参加させるというのであれば業務命令となり、業務として賃金を支払う必要も生じてくると考えられます。
また、質問のように、積立金の返金を認めると社員旅行の参加者が減ると心配する会社もありますが、参加者が減るということは、そもそも社員は社員旅行を望んでいないということでしょう。旅行内容を見直す、あるいは旅行の実施自体を見直してもよいのではないでしょうか?
会社が預かるのではなく、社員による任意団体である「親睦会」が、親睦会費として親睦旅行の積立金を徴収している場合はどうでしょうか?
親睦会でお金を管理するのであれば、会員から集めた会費は何に使うのか、余ったお金はどうするのかなど規約に定めておく必要があります。
では、ここで不参加でも返金しないと定めておけば、旅行積立金を返金しなくても問題ないのでしょうか?
任意団体である「親睦会」が管理する場合は、労働基準法の規定は適用されず、民法の「不当利得」(正当な理由なく利益を受け他人に損失を与えること)にあたらないか、「公序良俗」に反しないかという点で判断することになります。
例えば、「親睦会費」という名目で徴収していても実態は社員旅行の積立であり、他の目的には使っていないということであれば、旅行に参加しない社員に返金しないことは不当利得にあたると判断される可能性は高いでしょう。
しかし、旅行だけでなく歓送迎会などのイベントや退職者へのプレゼントなど親睦会全体の活動費にあてられるのであれば、旅行に参加できなかったとしても別の機会にプレゼントをもらうなど利益を得られる可能性があるわけです。そのように考えると不参加者に返金しないことが不当利得にあたる可能性は低くなると思われます。
ただ、一般的に旅行代金は金額が大きいため、参加できなかった社員にしてみれば「返金してほしい」と考えるのも無理のないことです。 無用なトラブルを避けるためにも、旅行積立金とその他の親睦会費は分けて徴収・管理し、旅行積立金に関しては不参加の場合には返金するという扱いにするのがよいでしょう