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人事労務の法律教室-14 〜派遣社員を直接雇用することはできるか?〜

現在、派遣社員に勤務してもらっていますが、いい人物だったので、このまま当社で直接雇用したいと考えています。ただ、派遣会社との契約書の中に引き抜きを禁止する規定があります。直接雇用してはいけないのでしょうか?

派遣先が派遣労働者を直接雇用する場合、派遣期間終了後に雇用することが基本です。ただし、派遣元、派遣労働者と協議の上で派遣契約を終了し、職業紹介により直接来ようするケースもあります。

近年、人手不足などから派遣労働者を直接雇用するケースが増えています。ただし、他社で雇用されている人をスカウトする場合は、トラブルになることもあるため、注意すべきポイントは確認しておきましょう。 労働者派遣の場合、派遣元、派遣先、派遣労働者によって図のような三者関係にあります。それぞれの関係から見ていきましょう。

○派遣先と派遣元

基本的に、他の会社で雇用されている人であっても、スカウトすること自体に違法性はありません。ただし、「あの会社はもうすぐ倒産する」などと嘘の悪評で退職を促したり、同時に何人も引き抜くなどすれば、人材を引き抜かれた会社から損害賠償請求をされることもあるでしょう。

労働者派遣の場合、派遣先と派遣元は契約を結んでいます。契約書には、派遣期間の途中で派遣先が派遣労働者を直接雇用することを禁止する定めを設けることが一般的です。

ただし、労働者派遣法では、派遣労働者が派遣元との雇用関係が終了した後に派遣先が雇用することを禁ずる派遣契約を締結してはならないと定めています。また、派遣元と派遣労働者の間でも、同様に派遣先で雇用されることを禁止する契約を締結してはならないとしています。ですから、派遣契約期間終了後であれば、派遣先は自由に派遣労働者を雇用することができます。

○派遣元と派遣労働者

次に派遣元と派遣労働者の関係です。派遣元と派遣労働者との雇用契約は、有期雇用と無期雇用があります。

有期雇用の場合、民法により原則として労使ともに契約期間の途中で解約することはできず、一方に過失があれば損害賠償の責任を負うと定められています。期間途中で退職を願い出ても労働者に損害賠償を請求する会社はなかなかありませんが、これから戦力になってもらおうとする労働者が前職の会社とトラブルになることは避けたいですから、派遣元との契約が終了してから雇用することが望ましいでしょう。

なお、労働契約期間が1年を超えるものであれば、労働基準法により1年を経過すれば労働者はいつでも退職を申し出ることができます(例外業務などがあります)。

有期雇用の場合はあまりないのですが、無期雇用の場合、就業規則に競合避止義務が定められていることがあります。競合避止義務とは、ライバル会社への転職を一定期間禁止するものです。例えば、IT企業が派遣事業をおこなっており、同業であるIT企業に労働者を派遣することがあります。こうしたケースでは、自社のノウハウなどの流出を防止するために競合避止義務を定めていることも多いため、このような会社の労働者を引き抜くと労働者が契約違反となってしまうことがあります。

○話し合いによる円満退職

どのような場合でも、労働者は会社と円満に退職するよう努めるべきです。スカウトする側も、労働者が会社とトラブルにならないよう退職時期などに配慮するべきでしょう。派遣契約を中途解除して雇用したい場合などは、派遣労働者、派遣元と十分に話し合って、紹介予定派遣に切り替えたり、派遣契約を打ち切って職業紹介をしてもらうなどの方法もあるでしょう。つまり、派遣契約を終了することで派遣元は派遣料金を受け取れなくなりますが、代わりに紹介料金を支払うことで派遣元の合意を得るのです。

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