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人事労務の法律教室(11)「賃金支払いの5原則とは」とは?

賃金を支払うときには「賃金支払いの5原則」というものがあると聞きましたが、どのようなものでしょうか?また、注意すべき点があれば教えて下さい。

賃金の支払い方法について労働基準法に定められたルールで、「@通貨払いの原則」「A直接払いの原則」「B全額払いの原則」「C毎月払いの原則」「D一定期日払いの原則」の5つです。順に解説しましょう。

○通貨払いの原則

賃金は、通貨で支払わなければなりません。小切手や現物給与での支払いは認められていません。ただし、住宅供与や通勤定期券など、労働協約に別段の定めがある場合には、通貨以外のもので支払うことができます。

銀行口座に振り込んで支払う場合も「通貨払いの原則」の例外ですが、実際には安全性や便宜上の都合などから銀行など金融機関の口座への振込により賃金を支払う会社が一般的です。

口座振込をする場合、個々の労働者の同意が必要ですが、本人が振り込むべき銀行口座を指定すれば、同意があったと解されます。また、行政の指導では、労働者の書面による申し出が望ましいとし、次の3点を記載すべきとしています。

  • @口座振込を希望する賃金の範囲
  • A指定する金融機関、預金種類、口座番号等
  • B開始希望月

行政指導では労使協定の締結も必要となっていますが、労働基準監督署への届け出は必要ありません。労使協定には次の4点を記載します。

  • @対象労働者の範囲
  • A対象となる賃金の範囲・金額
  • B取扱金融機関等の範囲
  • C口座振込の実施開始時期

Bの「取扱金融機関」は、金融機関の所在状況等からして1つに限定せずに複数とするなど労働者の便宜に十分配慮して定めることとしています。 なお、口座振込にする場合は、賃金支払日の午前10時ごろまでに口座から引き出し可能な状態になっていなければなりません。

○直接払いの原則

賃金は、直接労働者本人に支払わなければなりません。他人を介して支払ったり、代理人等に支払ったりしてはいけません。

例えば、「妻が家計を管理しているから」とか、単身赴任していて「妻に生活費を振り込むのが面倒だから」といった理由で労働者本人が希望したとしても配偶者名義など労働者本人以外の口座に賃金を振り込むことは認められません。ただし、労働者が病気などで欠勤している場合に、配偶者など労働者の使者と認められる者に対して賃金を支払うことは認められています。

○全額払いの原則

賃金は、その全額を支払わなければなりません。しかし、例外として賃金から控除が認められているものがあります。

法令に別段の定めがあるもの
  • ・所得税
  • ・健康保険および厚生年金保険料
  • ・雇用保険料
  • ・市町村税(都道府県税)
労使協定の締結・届出が必要なもの
  • ・購入物品の代金
  • ・社宅や寮などの福利厚生費用
  • ・社内預金
  • ・労働組合の組合費 など

賃金の口座振込をおこなう際に発生する「振込手数料」については、本来、賃金支払いにおける経費として事業主が負担すべきものです。労働者本人からの依頼であったとしても、賃金から控除することは違法になります。

○毎月払いの原則

賃金は、毎月1回以上支払わなくてはなりません。毎月1回以上であれば、月2回でも週1回でも問題ありません。

ただし、賞与、見舞金、退職金など臨時に支払われる賃金や1ヶ月を超える期間の勤務状況等によって支給される精勤手当などについては、例外が認められています。

○一定期日払いの原則

賃金は、一定期日を決めて支払わなければなりません。年俸制であっても賃金は毎月1回以上、一定期日に支払う必要があります。

  
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