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女性社員から、上司にたびたび体を触られると苦情がきています。これが事実であれば、懲戒解雇も可能でしょうか?
体に接触する程度では懲戒解雇は難しいと思われます。降格や出勤停止などの処分を検討するべきでしょう。ただし、程度が悪質な場合は、普通解雇や退職勧奨も検討するべきでしょう。
セクシャルハラスメント(以下「セクハラ」という。)は、裁判の増加などから既に多くの人に周知されているようですが、いまだ強制わいせつのような刑法によって罰せられる程度のものだけをいうと考えている人も少なくありません。
下図は、セクハラを法律の関係から分類したもので、@からCへ悪質の程度が低くなります。セクハラはこのように段階的に捉える必要があるのです。
セクハラの法的整理
先日、都議会で問題となった発言(「早く結婚しろ」「産めないのか?」)もセクハラと言えます。このような発言は、結局根本には女性差別の意識があるのです。 セクハラは、職場環境を悪化させ、職務の遂行を阻害するものですから、会社としてその程度を広く捉え、「4.就業規則レベル」の行為まで防止していかなければなりません。
例えば、「まだ結婚しないのか?」などの発言で、女性社員が不快に思い仕事に集中できなければ、本来の能力は発揮されません。これまでの男性中心だった職場から脱却し、男女が平等に働ける環境を整え、企業が発展できるようにするためにも、セクハラを積極的に防止する必要があるのです。 万一、セクハラがおこなわれたときは、その程度に応じて、厳正に対処しなければなりません。
強姦、強制わいせつなど「1.刑法レベル」の行為は、刑法176条によって「6ヶ月以上10年以下の懲役」に処される犯罪です。このような行為をおこなった社員を放置すれば職場の秩序を保つことができませんから、懲戒解雇まで検討することになります。
過去の裁判例でも、悪質なわいせつ行為を繰り返したバスの運転手の懲戒解雇を有効と認めたものがあります。 洋服の上から胸やおしりを触るなど、強制わいせつとまではいえない程度の「2.民法レベル」の行為は、民法709条の不法行為として、民事損害賠償を請求できるケースになります。過去の裁判例では、宴会の席で部下の手を握ったり、肩を抱くなどの行為をおこなった上司の行為について、お酒を飲んで調子に乗っておこなったもので強制わいせつに当たらないとし、懲戒解雇を無効としたものがあります。
このように民法レベルの行為は、懲戒解雇できないと考えられ、降格や出勤停止などの制裁をおこなうべきと考えられます。ただし、たびたび同様の行為を繰り返せば、普通解雇も可能となるでしょう(適格性の欠如等を理由に雇用関係を終了する普通解雇は、懲戒解雇よりハードルが低い)。
1や2に該当しない程度のセクハラ、例えば職場において食事やデートに執拗に誘うなどの「3.均等法レベル」の行為は、就業環境が害されないように均等法11条によって使用者が雇用管理防止等の措置を講じなければならないものです。行政は使用者に対して指針等により「行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること」としているように、制裁の対象となるでしょう。程度としては、譴責、減給などが検討できるでしょう。
1〜3のような行為以外でも、「おばさん」と呼ぶなど職場でおこなわれない方が好ましい「4.就業規則レベル」の行為があります。これらは、すぐに制裁の対象とせず、まずは意識を変えさせるための指導等から検討するべきでしょう。それでも改善されない場合、譴責などの弱い制裁から検討していきましょう。