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人事労務の法律教室(7)アルバイトやパートタイマーの勤務時間を変更できるか?

レストランを経営しています。アルバイトには1日6時間、週4日のシフト制で混雑する時間帯に働いてもらっていますが、日によって店の混み具合も違うため、その日の状況によって勤務時間や時間帯を変更してもよいのでしょうか?

使用者の都合で労働時間を変更するには、就業規則等に根拠となる規定を設けておくべきでしょう。なお、労働時間を短縮する場合には、労働基準法の定めにより休業手当を支払わなければならないこともあります。

○変更は就業規則によるべき

労働時間については、法律に反しない範囲であれば、労働者と使用者が自由に決めることができます。労働基準法では、労働契約を締結する際、「始業・終業の時刻、所定労働時間、時間外労働の有無、休日、休憩、就業時転換(シフト勤務)に関する事項」などの明示を定めているため、これらの事項について、契約締結時に約束することになります。

ただし、アルバイトやパートタイマーの場合、業務の繁閑に合わせた柔軟な勤務も期待されるところです。そのためご質問のように、労働契約としては1日の労働時間や週の勤務日数などを定め、その都度、シフトを組みながら具体的な勤務を決めていくことが多いでしょう。このような場合も、シフト時間帯をいくつか定めるなどできる限り具体的に労働時間のルールを示すことが望ましいと言えます。

○残業や始業時刻の変更等

労働時間の変更については、基本的に労働者が同意すれば可能です。ただし、たとえ本人の同意がなくても、労働契約に根拠となる事項を定め変更することもできます。

まず、時間外労働や休日労働は、就業規則等に「命じることがある」旨を定め、これを根拠に働かせることができます。法定労働時間を超えるときは、労使協定の定めと届出、そして割増賃金の支払いも必要になります。アルバイトなどの場合、時間外労働までさせる予定がなかったために労働契約書に「時間外労働なし」と定めているところがあります。この場合は、契約内容の変更について本人の同意を得る必要があります。

始業・終業の時刻を繰上げたり、繰下げたりすることもできます。この場合も、使用者が一方的に変更するのではなく、「業務上の都合により変更することがある」などと就業規則等に定めることにより、命じることができます。

○早く帰らせることはできるか?

では逆に、暇な場合に、出勤日数を減らしたり、終業時刻より早く業務を切り上げさせることなどはできるのでしょうか?

そうすることは可能ですが、労働基準法では、「使用者の責に帰すべき事由により休業する場合」、その日について平均賃金の6割以上の休業手当を支払うよう定めています。  ここでいう「使用者の責」とは、天災地変のような場合を除く広く経営にまつわる責任であり、顧客が少ないなどの場合であっても、本来の労働日について休業させたときは、少なくとも平均賃金の6割を保障しなければなりません。

なお、1日の労働時間の一部を休業させた場合、その実労働に対し支払う賃金が平均賃金の6割に満たないときは、その差額を支払うことになります。

例:時給1,000円で6時間勤務の者を3時間早く帰らせる場合 休業手当=平均賃金1日6,000円×0.6=3,600円
実労働時間=1,000円×3時間=3,000円
・結果、実労働賃金の方が少ないため、その差額である600円の休業手当の支払い義務が発生します。

もう一つ、民法の定めも確認しておく必要があります。民法536条では、「使用者の責(債権者の責)」による休業について、その日の満額の賃金の請求権があるとしています。ただし、民法でいう「使用者の責」は、労働基準法でいう「使用者の責」よりも責任範囲が狭く、使用者の故意・過失に限定されるため、不景気による休業などの場合は使用者の支払い責任はないと考えることもできるでしょう。

なお、民法の規定は特約によって排除することができます。ケースによっては民法による満額の支払義務が生じることも考えられますから、就業規則等にこの規定を適用しない旨を定めておくとよいでしょう。

  
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