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人事労務の法律教室(5)「日によって勤務時間が異なるパートタイマーの年次有給休暇」

パートタイマーは時給制・シフト勤務で日によって勤務時間が異なります。「年次有給休暇(以下、「年休」という。)を4時間勤務の日に取っても8時間勤務の日に取っても1日分消化となるのはおかしい。4時間の日は半日消化にして欲しい。」と言われましたが、そのように取り扱わなければなりませんか?

半日消化にする義務はありませんが、同じ1日分消化ならと8時間勤務の日にばかり年休を取得され、会社の負担が大きくなる可能性があります。年休取得日の賃金の計算方法を変えることで不公平感を軽減することもできるでしょう。

○年休は1日単位で付与が原則

年休は疲労回復のための休養を目的としているため、1日単位で付与することが原則となっています。半休を付与している会社もありますが、本来は1日単位で与えなければならないところ、「半休を与えても違法ではない」解釈されているだけで半休を与える義務があるわけではありません。

ですから、ご質問のように所定労働時間が4時間以下の日に年休を取得した場合でも、1日分の消化となります。もちろん4時間以下の日に取得した場合で半休扱いとして0.5日分の消化とすることは、法律を上回る措置ですから問題ありません。

また、平成22年の労働基準法の改正により、ワーク・ライフ・バランスを図る観点から時間単位で年休を与えることも可能になっています。時間単位で取得できれば、子供の学校行事への参加や、役所や銀行での諸手続きなど、丸1日休む必要がない場合に年休を有効活用できるからです。 ただし、時間単位年休制度を導入するには労使協定が必要で、時間単位にできるのは年間5日分が限度となっています。

○3通りの計算方法がある
  • @所定労働時間働いた場合に支払われる通常の賃金
  • A健康保険の標準報酬日額
  • B平均賃金

3つの内からその都度自由に選べるのではなく、あらかじめどの方法で計算するかを就業規則等で定めておく必要があります。

ご質問のケースは@の方法でしょう。この方法は、年休を取得した日の所定労働時間分の賃金を支払えばよいので計算が楽ということもあり、採用している会社が多いようです。ただし、日によって勤務時間が異なる場合は、4時間の日に取ると損、8時間の日に取った方が得ということになり、パートタイマーは8時間勤務の日にばかり年休を取得するという事態になる可能性があります。 ギリギリの人数でシフトを組んでいる場合など、会社は年休取得者に8時間分の賃金を支払った上で、8時間分の代替要員を確保しなければならず、負担が大きいと言えるでしょう。

○年休1日分の金額を固定

では、他の方法はどうでしょうか?

Aは健康保険料を算出する際に用いる標準報酬月額を30で割った額です。ただし、Aの方法を採用するには労使協定の締結が必要です。また、パートタイマーの場合は社会保険に加入していない人も多いため、現実的ではないでしょう。

Bの平均賃金とは、直近の賃金締切日前3ヶ月間に支払われた賃金総額を、その期間の「総暦日数」で割った金額を言います。ただし、時給制の労働者の平均賃金には最低保障があり、3ヶ月間の賃金総額をその期間の「総労働日数」で割った額の60%と前述の方法で計算した額のどちらか高い方が平均賃金となります。どちらの計算方法にしても1日分の額は相対的に低くなります。

また、Bの場合は、その日の所定労働時間にかかわらず年休1日分の金額が固定されるので、8時間の日に取った方が得ということにはなりません。むしろ4時間の日に取った方がトータルの収入は多くなります。ただし、毎月の平均賃金を算出しなければならないため、事務負担は増えてしまいます。

どちらのメリットを取るかは会社の考え次第でしょう。

計算方法 メリット デメリット
通常の賃金 計算が楽 勤務時間が長い日にばかり休まれる
平均賃金 年休1日分の賃金額を低く抑えられる 毎月平均賃金を算出する手間が増える
  
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