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今回はパワハラの最終回として、パワハラの予防・解決対策、パワハラの予防への取り組み方、パワハラに取り組む必要性について書きます。
パワハラへの取り組みが難しいと考える企業も多いですが、一方で、対策に取り組み、成果を上げている企業もあります。取り組み始めたきっかけは、実際にパワハラ問題が発生したため、メンタルヘルス対策のため、セクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」という。)対策のためなど様々ですが、取り組みを進めるなかで、企業の存続や発展、仕事に対する意欲や職場全体の生産性の向上、企業イメージ、コンプライアンスなど、様々な点で対策の有効性を認識するに至っています。
では、労使の取り組みには具体的にどのようなことが考えられるでしょうか?
取り組みには、企業が単独で行っているもの、労使が共同で行っているもの、労働者側が単独で行っているもの等、様々です。 労使が共同で取り組むには、お互いに話合いの場を設置したり、既にある話し合いの場を活用したりする場合があります。また、労働者側は、相談窓口を設置したり、周知啓発を行ったりするとともに、企業に対して対策に取り組むよう働きかけを行うことが望まれます。
また、上司の立場にある方は、自らがパワハラをしないことはもちろん、部下にもさせないように職場を管理することが求められます。留意すべき点は、パワハラ対策が、上司の適正な指導を妨げるものになってはならない、ということです。上司は自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、その役割を遂行することが求められます。例えば、遅刻を繰り返す部下に対してみんなの前で叱ったとしても指導の範囲と言えるでしょう。上司として責任を適正に果たせる職場環境を整えることが重要です。
企業によって、パワハラの実態は様々ですので、その対策にも正解はありません。パワハラはまだ法的な制度が確立されていませんが、セクハラのように既に雇用管理上講ずるべき措置が明確化されている制度の枠組みに沿って対応を行うなど、それぞれの職場に即した形でできることから始め、充実させていく努力が重要です。
職場は人生の中で多くの時間を過ごす場所であり、様々な人間関係が存在しています。そのような場所で、パワハラを受けることにより、人格や尊厳を傷つけられたり、仕事への意欲や自信をなくしたり、居場所を奪われることで他者との人間関係を絶たれたりする痛みは計り知れないものがあります。さらに最近ではメンタルヘルスの不調にもつながり、場合によっては休職や退職に追い込まれたりと、働く希望を失うことさえあるのです。
もし、自分や自分の家族がパワハラを受けたらと想像するだけでも、この問題に取り組む重要性が感じられるのではないでしょうか?
一人ひとりの尊厳や人格が尊重される職場づくりは、職場の活力、仕事に対する意欲、職場全体の生産性などを向上させることにも役立つことになります。単に職場の禁止事項を増やし、活力を削ぐものととらえるのではなく、経営上重大な課題であることや職場の活力に繋がるものと捉えて、積極的に推進していくことが求められます。