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近年何かと話題にのぼる「パワハラ」について3回に分けて書きたいと思います。
今回は1回目として、パワハラの調査結果や背景、定義について書きます。
「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメント」は、労働者の尊厳や人格を侵害する許され ない行為です。また、これを受けた人だけでなく、周囲の人、これを行った人、企業にとっても 多大な損失となります。
「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメント」は予防・解決することにより、仕事に対す る意欲や職場全体の生産性の向上にも貢献し、職場の活力に繋がりますので、企業はもちろんの こと、社員一人一人もこの問題について積極的に取り組むことが重要です。
厚生労働省が昨年末に発表した「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメント」の調査結果 によると、4人に1人が過去3年間に「パワハラを受けた」と回答し、さらに彼らに「誰から受け たか」について複数回答で聞いたところ、「上司から」がトップの77.7%を占める一方で、「先 輩から後輩へ」が15.7%、「正社員から正社員以外へ」が10.6%となっています。年代別みると 30代が27.2%と最も多い結果となりました。
また、都道府県労働局に寄せられる「パワハラ等」の相談は、平成14年度には約6,600件だ ったのに対し、10年後の平成24年度では約51,670件と約8倍近くとなり急速に増加しています。 では、どうしたら「パワーハラスメント」のない職場作りを行うことができるのか?今回はこ の問題に取り組む必要性と対策についてお話させて頂きます。
「職場のパワーハラスメント」(以下、「パワハラ」という。)が社会問題として顕在化され るようになった背景には、企業間競争の激化による社員への圧力の高まり、職場内でのコミュニ ケーションの希薄化や問題解決機能の低下、上司のマネジメントスキルの低下、上司と部下の価 値観の相違拡大等が挙げられます。
例えば、上司や成績が優秀な方は、自分がこれまでやってきた方法により「成果を上げた」、 「成功をしてきたのだから正しい」とどうしても思いがちです。そして部下の成績が上がらない と、つい自分の方法を押し付け、自分では指導と思っているつもりが、情熱的な人ほどエスカレ ートした指導となりパワハラへと発展していきます。職場での立場は上司や部下、職場の役割 ・権限によって大きく異なります。また、人によって指導の受取り方も異なります。最近は社員 やパート・アルバイトだけでなく、派遣社員や外国籍の方も一緒の職場環境で働くようになりま した。個々の存在を尊重し、個性を理解して、それぞれの人達に合った柔軟な指導をしていくこ とがとても大切です。
厚生労働省は2012年1月末に初めて「パワハラの定義」を取りまとめました。 パワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性 を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる 行為」を言います。
パワハラという言葉は、上司から部下へのいじめ・嫌がらせを指していることが多いですが、 先輩・後輩間、同僚間、さらには正社員から派遣社員、部下から上司に対して行われるものもあ ります。「職場内の優位性」には、「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識など様々な 「優位性」も含まれているのです。
また、パワハラは「業務上の指導との線引きが難しい」との指摘もあります。予防・解決に取 り組むべき行為は「業務の適正な範囲を超える」ものが該当しますので、上司が業務上必要な指 示や注意等を部下に対して行った際、例え部下が指導に対して不満を感じたとしても業務の適正 な範囲で行われている場合はパワハラには当たりません。